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Q193【一般社団法人等】法人税が課税される「収益事業34業種」の判定で迷いやすい事例 / 技芸教授業とは? /保育園・障害福祉サービスの法人税・消費税課税判断

最終更新日:2023/06/30

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Q193【一般社団法人等】法人税が課税される「収益事業」の判定で迷いやすい事例 / 技芸教授業とは? /保育園・障害福祉サービスの法人税・消費税課税判断

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

株式会社などの普通法人の場合、営利を目的とした団体のため、すべての所得に課税されます。
一方で、一般社団法人については、営利を目的としない団体(非営利法人)のため、一律すべての所得に課税されるのは適切ではありません。そこで、法人税上、一般社団法人は、「普通法人型」と「非営利型」①の2種類に区分され、「非営利型」の場合は「収益事業」についてのみ課税されます。

今回は、一般社団法人等にかかる法人税上の「収益事業」につき、実務上迷いやすい事業の判断につき解説します。

 

1. 収益事業課税が行われる法人

法人税上、「収益事業」のみに課税される法人は、法人税法上に定められた「公益法人等」となります(法法2条別表第二)。代表例は以下となります。

①公益社団法人・公益財団法人 ②社会福祉法人 ③学校法人 ④宗教法人
⑤NPO法人 ⑥非営利型の一般社団法人・一般財団法人等

 

2. 収益事業、非収益事業の判定方法

(1)法人税上の収益事業とは?

法人税上の「収益事業」とは、下記34業種に該当する事業で、かつ「継続して」「事業場を設けて」行われるものと規定されています(法人税法2条13項、法令5条1項、法基通15-1-1~8)。
収益事業に「付随して行われる行為」も、収益事業に含まれます(法基通15-1-6)。

逆に言うと、「上記34業種に該当しない場合は、法人税がかからない」ということになります。

 

(2)34業種とは?(法施令5条)

法人税法に規定される収益事業34業種は、以下の通りです。

1物品販売業10請負業19仲立業28遊覧所業
2不動産販売業11印刷業20問屋業29医療保健業
3金銭貸付業12出版業21鉱業30技芸教授業
4物品貸付業13写真業22土石採取業31駐車場業
5不動産貸付業14席貸業23浴場業32信用保証業
6製造業15旅館業24理容業33無体財産権提供業
7通信業16飲食業25美容業34労働者派遣業
8運送業17斡旋業26興行業
9倉庫業18代理業27遊技所業

なお、「収益事業」の判定は、上記「34業種に該当するかどうか」で、一律に判定します。本来の目的事業かどうか?会員等に利益の分配を行うかどうか?で判断するわけではありませんので、ご留意ください。

(3) 収益事業判断の具体例

例)非営利型一般社団法人で、下記の入金があった場合。

入金内容収益事業に
該当するか?
理由
賛助会費×34業種に該当しない。
物販34業種(物品販売業)に該当(法令5条1項 )
出版物の刊行34業種(出版業)に該当(法令5条12項)
出版物刊行に関係する講師料収入収益事業を営むために行う付随行為

 

3. 技芸教授業に該当する事業は? パソコン教室・サッカー教室は?

上記34業種のうち、30番「技芸教授業」は、実務上迷いやすい事業です。

(1) 「技芸教授業」とは?

技芸教授業とは、①技芸の教授、②公開模試学力試験、③大学入試のための学力の教授の3つです。技芸に関する「免許付与」も含まれます。このうち①「技芸」は、法人税上、以下の22項目が「限定列挙」されています(法人税施行例第5条30項)。

洋裁、和裁、着物着付け、編物、手芸、料理、理容、美容、茶道、生花、演劇、演芸、舞踊、舞踏、音楽、絵画、書道、写真、工芸、デザイン、自動車操縦、小型船舶操縦

 

上記項目は「限定列挙」となります。したがって、例えば、音楽・書道教室は列挙されているため「収益事業」になりますが、そろばん・PC教室・サッカー教室等は「収益事業」になりません。
つまり、「取り扱う事業」によって、法人税がかからないケースもある!ということになります。

(2) セミナー・講師派遣事業収入の課税判断

一般社団法人(非営利型)が開催する有料のセミナーは、当該セミナーの内容が、上記の「22項目技芸」に該当すれば、収益事業に該当します。「講師派遣事業」も同様に判定します。また、収益事業には「付随して行われる行為」も含まれますので、例えば「上記22項目技芸」に付随して行われる「一般セミナー」も「技芸の教授」に該当します(法基通15-1-6)。

 

例えば、有料の「料理セミナー」は、上記技芸22項目に含まれますので「収益事業」に該当します。また、料理のための、一般栄養セミナーは、「付随行為」となり収益事業に含まれます。
一方、有料の「語学・簿記セミナー」は技芸22項目に含まれないため、収益事業に該当しません。語学や簿記取得のための一般教養セミナーは、付随行為となりますが、そもそも22項目技芸に含まれないため、同様に収益事業には該当しません。

(3) 資格認定事業収入は?(技芸に関する免許付与)

一般社団法人では、「資格認定事業」(免許付与)を行うケースも多いと思います。こういった「資格認定事業」についても、考え方は上記(2)と同様です。限定列挙された「22項目技芸」に該当する資格認定かどうかで判定します(法人税基本通達15-1-66)。

例えば、有料の「生け花」資格認定事業は、収益事業に該当しますが、「囲碁将棋」資格認定事業は、22業種に該当しないため、収益事業には該当しません。

 

(4)テキストの販売は? (教材の頒布)

上記の「22項目技芸」に該当する「テキストの販売」は「付随行為」となりますので、収益事業に該当します。ただし、「テキストの販売」は、そもそも「1.物品販売業」となりますので、「上記技芸22項目」に該当しない「テキストの販売」についても、収益事業となる点にご留意ください。

 

4. 保育園の課税判断

(1) 法人税上の「収益事業」の判定

① 保育料の「収益事業」判断
保育園と幼稚園は、根拠となる法律が異なりますので、「保育料」に関する法人税上の収益判断も異なります。以下の通りです。

法律(所管)保育料の法人税上の取扱い
幼稚園学校教育法(文部科学省)に基づく「教育事業」原則 非収益事業
保育園児童福祉法(厚生労働省)に基づく「育児サービス業」原則 収益事業
(10.請負業・子供を預かる業務委託)

ただし、保育園についても、「児童福祉法」に基づく都道府県等の認可、証明施設等、一定要件を満たす場合は、法人税上「非収益」となります。以下の通りです(消費税の判定は後述します)。

 

形態法人税判定消費税判定
認可保育園(認定こども園含む)非収益事業非課税
認可外保育園監督基準を満たす「証明施設」(※)非収益事業非課税
上記以外収益事業課税
認可小規模保育事業非収益事業非課税

(※)一定の質を確保し、児童の安全を図る目的で定められた監督基準を満たしている認可外保育施設は、都道府県知事からその旨の「証明書」が交付されます。

 

② 保育料以外の取引の「収益事業」判断
保育園ではさまざまな活動が行われるため、保育料以外にも、法人税法上の「収益事業」の判断につき、判断に迷うことが多いです。法人税上、取引ごとの収益事業判定が例示されています。以下の通りです。

収益or非収益事業根拠
絵本・ワークブックの頒布(はんぷ)非収益事業法基通15-1-10宗教法人、学校法人等の物品販売(2)教科書その他これに類する教材の販売
はさみ・のり・粘土その他工作道具の頒布収益事業(物品販売業)。ただし、原価販売が明らかなものは除く法基通15-1-10(3)(4)
希望者を対象とした音楽教室のための教室等の席貸し非収益事業法施令第5条第1項第14号(席貸業)のかっこ書
園児に対し課外授業として実施する音楽教室の開設収益事業(技芸教授業)法施令第5条第1項第30号 (技芸教授業)
スクールバスの運行非収益事業教育事業そのものに含まれる
給食非収益事業学校給食法等の規定に基づく「学校給食事業」に準ずる

 

(2) 消費税上の「課税取引」判断

認可保育園等、一定の保育園については、「乳児又は幼児を保育する業務として行われるもの」につき、消費税非課税とされています(消法14条の3第1項他)。
上記の定義より、消費税が非課税取引となるもの、課税取引となるものをまとめると、以下の通りとなります。

消費税非課税消費税課税
保育料(延長保育、一時保育、病後児保育を含む)
● 保育を受けるために必要な予約料、年会費、入園料(入会金・登録料)、送迎料
● 保育に必要不可欠な給食費、おやつ代、施設に備え付ける教材費、傷害・賠償保険料の負担金、施設費(暖房費、光熱水費等)
● 施設利用者に対して販売する教材等の販売代金
● 施設利用者の選択により付加的にサービスを受けるためのクリーニング代、オムツサービス代、スイミングスクール等の習い事の講習料等
● バザー収入

5. 障害福祉サービス

(1) 法人税上の「収益事業」の判定

障害福祉サービスとは、障害者総合支援法に規定する「障害者に対して介護等を行うサービス」です。傷害福祉サービスは、医療保健面でのケアが必要であり、医療と密接な連携があることから、原則として、「29.医療保健業」に該当し、収益事業となります(法令5条1項㉙)。
なお、「就労移行支援」のように「医療や保健」と直接関わりのないサービスでも、「利用者からそのサービス対価を収受する」点を重視して、「10.請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)」に該当するものとされています(法令5条1項⑩)。
結論的には、障害福祉サービスは、「医療保健業」か「請負業」のどちらかにあてはまり、「収益事業」と取り扱われます。

 

(2) 消費税上の「課税取引」判断

障害者支援事業についての消費税判断は、制度内事業(障害者総合支援法に基づいて行われる事業)は原則非課税、制度外事業(生産活動としての資産の譲渡)は原則課税となります(消基通6-7-5(2)チ、6-7-6)。
考え方は、介護保険事業と似たような感じです

6. 参照URL

(収益事業の範囲(法基通15-1))

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/15/15_01_01.htm

(法基通 15-1-66・67 技芸教授業)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/15/15_01_30.htm

(認可外保育施設)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/21/17.htm

(小規模保育事業の認可を受けて行う保育サービス事業)

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/shohi/161107/01.htm#a01

(幼稚園が行う各種事業の収益事業の判定について)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/830603/01.htm

(認可外保育施設の利用料(消費税)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/10/05.htm

(保育所を経営する事業に類する事業として行われる資産の譲渡等)

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=33aa7001&dataType=0&pageNo=1

(障害者総合支援法に規定する障害福祉サービス)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/21/18.htm

 

7. YouTube

 

YouTubeで分かる「一般社団法人等」

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