税金の豆知識
Q78【徹底比較】福利厚生費と給与や交際費・社内飲食費との違い?要件は?仕訳例で解説
最終更新日:2023/05/2366062view
お仕事をされている従業員のために、「福利厚生費」を支出する場合もありますね。
例えば、慶弔見舞金、歓送迎会・忘年会費用、健康診断費用、残業食事代などです。
ただし、税務上、こういった「福利厚生費」は、無制限に「損金」として認められるわけではありません。
福利厚生費として損金処理を行うためには、「一定の要件」を満たす必要があります。
要件を満たさない場合は、「給与」あるいは「交際費」と取り扱われます。
そこで今回は、「福利厚生費」と周辺の科目である「給与」及び「交際費」との違いにつき解説します。
実務上は・・非常に判断が難しい論点です。
目次
1.福利厚生費とは
福利厚生費とは、従業員に対する「福利厚生」を目的とした支出です。
給与以外の報酬であり、大きく、以下の2種類となります。
(1)法定福利費
法定福利費とは、社会保険(健康保険・厚生年金保険等)、あるいは労働保険(労災保険・雇用保険等)の「事業主負担額」のことです。法律で規定が明確に定められている「福利厚生費」をさします。
(2)福利厚生費(法定外福利費)
従業員に対する「福利厚生」を目的とした支出で、上記の「法定福利費」以外は、単に福利厚生費(法定外福利費)と呼ばれます。例えば、食事補助、社宅、福利厚生施設、社員旅行、お菓子やお水などは「福利厚生費」です。
ただし、法律で明確に定められている「法定福利費」と異なり、企業独自の内容のものですので、税務上は「福利厚生費」として損金計上するための「一定の要件」を定めています。
① | 全従業員を対象(特定の従業員に対する支出は×) |
---|---|
② | 社会通念上妥当な金額 |
2.福利厚生費と給与の違い
(1)福利厚生費と給与の違い
従業員に対する支出であり、どちらも「損金」になる点は共通していますが、支出目的や、個人側の所得税課税、社会保険料の課税対象となるかという点で、大きく異なります。
なお、要件を満たす「福利厚生費」は、税法上、損金算入限度額の上限は特にありません。
福利厚生費 | 給与 | |
---|---|---|
内容 | 従業員の福利厚生を目的にしたもの | 労働の対価としての給付 |
損金可否 | 損金 | 損金 |
個人所得税 | 非課税 | 課税(源泉徴収必要) |
社会保険料 | 非課税 | 課税 |
つまり・・福利厚生費の場合、「所得税非課税」「社会保険非課税」となるため、個人にとっても法人にとってもお得ということになりますね。
(2)福利厚生費となるもの・給与となるもの
「福利厚生費」となるものと「給与」となるものを比較すると、以下の通りとなります。
ただし、福利厚生費は、すべて「一定の要件」を満たす必要があります。
それぞれの制度で「福利厚生費」となる要件は、各リンク先URLをご参照ください。
要件を満たさない場合は、「給与」となります。
福利厚生費 | 給与 |
---|---|
●社員旅行 ●食事代負担 ●健康診断費用 ●社宅 ●通勤手当 ●結婚・出産祝 ●永年勤続者記念 ●忘年会等社内行事、お茶やお菓子など | ●給与・賞与 ●家族手当、住宅手当、食事手当等の各種手当(通勤交通費は除く) ●商品券・クオカード等 |
なお、「通勤交通費」は、所得税上非課税とはなりますが、人件費的な意味合いが強いため、勘定科目は「福利厚生費」ではなく、「通勤交通費」で別建処理することが多いです。
3.福利厚生費と交際費の違い
(1)福利厚生費と交際費の違い
福利厚生費は、従業員に対する「福利厚生」を目的とした支出です。
一方、交際費は、接待、慰安等を目的とした支出ですが、社外の方(得意先・仕入先)への支出だけでなく、社内従業員を対象とした場合も「交際費」に含まれます。(租措法第61条の4第4項・第61条の4(1)-22)。
福利厚生費は「全額損金」になりますが、交際費の場合は「損金算入限度額」があります。
したがって、実務上は、「福利厚生費」と「社内交際費」の区分も重要となります。
例えば、社内の従業員だけで行った飲み会は福利厚生費なのか、社内交際費なのか・・実務上は難しい判断です。
福利厚生費 | 交際費 | |
---|---|---|
損金の可否 | 損金 | 一部損金不算入 |
(2) 福利厚生費となるもの・交際費となるもの
社内の方のみでの「飲食代」は、原則として「交際費課税の対象」となりますが、「一定要件」を満たす場合は、「福利厚生費」処理が可能です(措法61の4(1)-10)。
(要件)
① | 社内行事等のために、概ね従業員一律に支出(特定の従業員に対する支出は×) |
---|---|
② | 社会通念上妥当な金額 |
(3) 具体例
福利厚生費 | 交際費 |
---|---|
●社員全員を対象とした忘年会等で通常要する費用 ●忘年会等で通常要する景品費用 | ●部課単位等の忘年会で、会社全体では開催のバラつきがある ●特定の従業員のみが参加する飲み会 |
なお、業務都合等で「忘年会」に参加できなかった社員がいた場合でも、社員一律に参加できる機会を与えている場合は、「福利厚生費」処理が可能です。
4.役員への福利厚生費は?
役員も、法人の「従業員の一人」となりますので、福利厚生費の支払いは可能です。
ただし、従業員がいないオーナー兼一人社長に対する福利厚生費については、給与認定(=役員報酬)される可能性が高いです。
詳しくはQ79をご参照ください。
5.福利厚生費の消費税上の取扱い
内容 | 消費税上の取扱い |
---|---|
健康診断・人間ドックなど | 課税 |
忘年会費用など | 課税 |
慶弔費等の贈答 | 不課税 |
社会保険料 | 非課税 |
6.仕訳例
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
従業員への結婚祝を支払 | 福利厚生費(不) | 50,000 | 現金 | 50,000 |
従業員へ商品券をプレゼント | 給与(不) | 50,000 | 現金 | 50,000 |
残業用パン代を購入 | 福利厚生費(課) 仮払消費税 | 45,455 4,545 | 現金 | 50,000 |
食事手当の支給 | 給与(不) | 50,000 | 現金 | 50,000 |
通勤手当の支給 | 通勤交通費(課) 仮払消費税 | 45,455 4,545 | 現金 | 50,000 |
全員参加の忘年会費用支払 | 福利厚生費(課) 仮払消費税 | 45,455 4,545 | 現金 | 50,000 |
社内の一部だけで行く飲み会 | 交際費(課) 仮払消費税 | 45,455 4,545 | 現金 | 50,000 |
会議用お茶、お菓子の購入 | 会議費(課) 仮払消費税 | 45,455 4,545 | 現金 | 50,000 |
なお、社内飲食費については、交際費課税の対象から外れる5,000円基準の適用はありません。
7.参照URL
(交際費と福利厚生費の区分)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5261.htm
(交際費等の範囲)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/08/08_61_4a.htm
8. YouTube
YouTubeで分かる「福利厚生費と給与や交際費・社内飲食費との違い」