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Q5【令和4年改正】退職金の所得税計算方法/源泉徴収票の記載例/分離課税の税率は?

最終更新日:2023/06/24

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この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

退職金の所得税等は、通常の「給料」にかかる税金と比べると、税額が非常に低くなります。
ただし、令和4年分以後の従業員の退職金については、税制改正により増税が予定されています。

今回は、退職金にかかる税額の具体的計算と、源泉徴収票の記載方法、及び令和4年分以後の改正内容について解説します。

 

1.退職所得の算定方法

(1)原則

退職所得の金額は、次のように計算します。

● (収入金額(源泉徴収前) - 退職所得控除額) × 1/2 = 課税退職所得の金額(千円未満切捨)
● 課税退職所得の金額×税率(1円未満切捨)

 

(2)例外

①特定役員退職手当(役員)

例外的に、役員等の勤続年数が5年以下で、役員退職金の支給を受ける場合には、上記2分の1ができません
役員とは、法人税上の役員等を指します。
 

②短期退職手当(従業員)

令和4年分以後の退職金につき、退職所得控除の改正が予定されています。
役員等でないものの勤続年数5年以内の退職金につき、退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分について、2分の1課税が廃止されます。
詳しくは、下記「6.令和4年以降の改正」で解説しています。
 

2.退職所得控除額

「退職所得控除額」とは、勤続年数に応じて、退職金額から差し引ける「経費」のようなものです。
以下となります。

勤続年数20年以下40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
勤続年数20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

勤続年数については、1年未満の端数は「1年」に切り上げます。
 

3.退職金の所得税率

退職金は、「分離課税」となります。分離課税の場合、他の所得(給料等総合課税の所得)と合算せず、退職金だけを「分離」して税金計算を行います。
退職所得に対する分離課税の「所得税率」は以下の通りです。
「退職所得の源泉徴収税額の速算表」と呼ばれています(累進課税)

退職所得の源泉徴収税額の速算表
課税退職所得の金額(A)所得税率(B)控除額(C)税額=((A)×(B)-(C))×102.1%
195万円以下5%0円((A)×5%)×102.1%
195万円超 330万円以下10%97,500円((A)×10%-97,500円)×102.1%
330万円超 695万円以下20%427,500円((A)×20%-427,500円)×102.1%
695万円超 900万円以下23%636,000円((A)×23%-636,000円)×102.1%
900万円超 1,800万円以下33%1,536,000円((A)×33%-1,536,000円)×102.1%
1,800万円超 4,000万円以下40%2,796,000円((A)×40%-2,796,000円)×102.1%
4,000万円超45%4,796,000円((A)×45%-4,796,000円)×102.1%

所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が課税されますので、最終的に102.1%を掛け合わせています。

上記のほか、住民税10%が課税されます。
 

4.具体例

●勤続年数20年、退職金1,000万円
●その年中 に受けた「他の退職手当等」はなし
●「退職所得の受給に関する申告書」提出済。

(1) 課税退職所得の金額(千円未満切捨)

(1,000万円 – 40万円 × 20年) × 1/2 =100万円

(2) 税額の計算(1円未満切捨)
税目金額計算根拠
所得税+復興特別所得税51,050円(100万円×5%)×102.1%=51,050円
市民税60,000円100万円×6%=60,000円
県民税40,000円100万円×4%=40,000円
合計151,050 円

もし、1,000万円を「退職金」ではなく、「給与」でもらったら?
⇒(給与収入1,000万円―給与所得控除195万円)=給与所得805万円
⇒給与所得805万円の所得税・住民税(扶養ゼロとする) ⇒ 約186万円

 

「退職所得控除」の存在と、1/2できることで、退職金の税額はかなり低いことがわかります。
 

5.退職所得の源泉徴収税額及び源泉徴収票

(1)退職金の源泉所得税額

退職金は、一括払、分割払に関わらず、トータルの退職金額で所得税が算定されます
(年金形式で受け取る場合は除く)。
原則として、退職金支払時に所得税を「源泉徴収」して支払いますが、「一括払」か「分割払」かで、源泉徴収する金額は異なってきます。

①一括払の場合

上記3記載の「退職所得の源泉徴収税額の速算表」を用いて算定した「源泉徴収金額」を徴収します。
(「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合は、20.42%の源泉徴収)。

②分割払の場合

上記①で算定したトータルの源泉徴収税額を、各回の支給金額であん分して計算することとなります
(所得税基本通達183~193共-1、201-3)。また、住民税の特別徴収額も、所得税同様、トータルの税額を各分割支払金額であん分した額を、分割払の都度天引きします。
 

上記の通り、退職金は、「分離課税」かつ退職金支払時に「源泉徴収」されますので、退職金支払時に「所得税課税計算」は完結しています。したがって原則として「確定申告」をする必要はありません。ただし、状況によっては「確定申告」することで、税金が還付される場合があります。詳しくは、Q142 をご参照ください。
 

(2)退職金の源泉徴収票

会社が退職金を支払う場合は、「退職所得の源泉徴収票」を作成し、従業員に交付する必要があります。
また、役員に対する退職金の場合は、「税務署」及び「市役所」に提出が必要となります
(死亡退職の場合は「退職手当金等受給者別支払調書」)

退職所得の源泉徴収票は、下記のとおり区分が3つに分かれています。
題名が長く、どこに記載すればよいのか?迷いやすいところです。

ただし、ほとんどの場合は、「一番上の上段」に記載するケースが多いと思います。

上段所得税法第201条第1項第1号並びに・・適用分その年中 に受けた「他の退職手当等がない」場合に利用
中段所得税法第201条第1項第2号並びに・・適用分その年中に受けた「他の退職手当等がある」場合に使用
下段所得税法第201条第3項並びに・・・・・適用分「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合に使用(20.42%の税率で源泉徴収)

(上記例題の場合の「源泉徴収票」の例)

 

(1) 改正の内容

令和4年分以後の退職金につき「税制改正」が予定されています。
従業員に対する勤続年数5年以内の退職金につき、退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分について、2分の1課税が廃止されます。

改正後の適用関係をまとめると、以下の通りとなります。

退職所得控除差引後の金額勤続年数5年以下勤続年数5年超
従業員300万以下1/2課税適用あり
300万超1/2課税適用なし1/2課税適用あり
役員金額制限なし1/2課税適用なし1/2課税適用あり

赤字が改正の箇所(令和4年以後の退職金より適用)
 

(2) 改正の影響~具体例~

勤続年数5年で退職した場合の所得税+住民税額 (単位:千円)

退職手当金額改正前税額改正後税額増減
5,0002252250
10,0007721,522750

●退職金が500万円の場合は、退職所得控除後の金額が300万円となるため「改正」による影響はありません。
●退職金1,000万円の場合は、退職所得控除後の金額が800万円となるため、300万を超えた金額については1/2ができず、約75万円の増税となります。

 

7.参照URL

(分割支給した場合の源泉徴収税額)https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/071205/01.htm

(No.2728 退職所得の収入金額の収入すべき時期)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2728_qa.htm

 

8.YouTube

 
 
YouTubeで分かる「退職金の所得税計算方法/退職所得の源泉徴収票の記載例」
 

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