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Q14【簡単な方法】労働保険の会計処理・仕訳は?勘定科目は法定福利費のマイナスでもOK!

最終更新日:2022/01/26

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労働保険料の会計処理/勘定科目

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

労働保険の会計処理は・・結構頭が混乱する方も多いかもしれません。
なぜなら、①従業員預り部分と会社負担部分の2種類で構成され、しかも②労働局への支払が「年間概算払」のためです。

今回は、労働保険料の概要と、会計処理についてまとめます。

 

1.労働保険料とは?

「労働保険」は、①労災保険と②雇用保険の2種類から構成されています。
一般的に「労働保険」と言われるのは、上記①+②の合計となります。

労働保険(労災保険料+雇用保険料)は、事業主が一括で前払いし、「従業員負担分」につき、毎月給与から控除して預かる形となります。
なお、役員は、原則として労働保険の対象となりません。

(労働保険の内訳)

労災保険全額事業主負担
雇用保険事業主、従業員それぞれで負担

 

2.労働保険料の計算方法

2022年3月期(第1期)の概算&確定保険料を例にして説明します。

種類支払時期内容
第1期の概算保険料2021年7月第1期(2021/4~2022/3)の「賃金見込額」に保険料率を掛けて算定&支払。
第1期の確定保険料2022年7月第1期(2021/4~2022/3)の「実際支払賃金総額」に保険料率を掛けて算定&支払。
実際支払額は上記「概算保険料」との差額です。(注)
第2期の概算保険料2022年7月第2期(2022/4~2023/3)の「賃金見込額」に保険料率を掛けて算定&支払。
大きな変動が見込まれない場合は、第1期の確定賃金額をもとに概算保険料を計算。

(注)不足の場合は、第2期「概算保険料」と合わせて追加納付。過納付の場合は、第2期の「概算保険料」に充当。
 

3.労働保険料の損金算入の時期等

労働保険料の損金算入時期をまとめると、以下の通りとなります。
ただし、法人負担部分のみとなります(従業員負担部分は損金×)。

概算保険料概算保険料の申告日or納付日(※1)
確定保険料不足の場合(納付)概算保険料の申告日or納付日
超過の場合(還付)確定保険料の申告日に益金算入(※2)

(※1)確定保険料申告前の決算で、未払計上により損金算入も認められます
(※2)通常は、実際還付を受けるわけではなく、次年度の概算保険料から控除されます。
 

4.具体的な会計処理

労働保険の会計処理は・・考えると奥深いですが、中小企業では、一番簡単な「現金主義」で十分かと思います。
 
(例題)3月決算。2022年3月期の概算・確定労働保険料

● 2021年4月労働保険加入。2022年3月期の「概算労働保険料」1,440を支払った(年間給与見込120,000)(※)
●2022年3月期の「確定労働保険料」は1,560と算定された(実際年間給与130,000)(※)
●労働保険料率12/1000(労災保険料率3/1000、雇用保険料率9/1000(うち事業主6/1,000・従業員3/1000))とする。
●簡便的に、給与支払時の天引きは、雇用保険のみとする。

(※)

概算保険料年間給料見込額 120,000×12/1,000=1,440
確定保険料年間給料確定額 130,000円×12/1,000=1,560
(1)現金主義での仕訳

中小企業で圧倒的に多いのは、下記の処理です。現金主義で仕訳を行います。
中小企業の場合は、下記で十分かと思います。

借方貸方
概算払時(2021年4月)法定福利費(労・雇)1,440現金1,440
給与支払時(※1)給料130,000現金
法定福利費(雇)
129,610
390
期末仕訳なし
確定保険料支払時(2022年7月)(※2)法定福利費(労・雇)120現金120
次年度概算払(2022年7月)法定福利費(労・雇)1,560現金1,560

(※1)年間合計の給与仕訳で記載しています(130,000×3%)。
実際の毎月の仕訳は、毎月の給料×3%(雇用保険料率)の仕訳となります。
(※2)決算期末(2022年3月)に、未払計上も認められます
 

(ご参考~前払部分の取扱い~)

厳密には、概算保険料(法人負担分)には、「前払部分」が含まれています
しかし、税務署上の運用としては、継続適用を条件として、支払時に損金処理しても、大きな問題になることは少ないようです。(具体的な記載箇所はありませんが、短期前払費用(法人税基本通達2-2-14)の考え方からのようです)。
 

(2)発生主義での仕訳

上場会社などでは、発生主義が要求されますので、以下の仕訳となります。
ただし・・BSの相殺処理等で頭が混乱する可能性高いですので、中小企業の場合は上記(1)で十分です。

借方貸方
概算払時(2021年4月)前払費用(労・雇)1,440現金1,440
給与支払時(※1)給料130,000現金
前払費用(雇)
129,610
390
会社負担分概算費用計上(※2)法定福利費(労)1,170 前払費用(労)1,170
決算時(※3)前払費用(労・雇)120未払費用120
確定保険料支払時(2022年7月)未払費用120現金120
次年度概算払(2022年7月)前払費用(労・雇)1,560現金1,560

(※1)年間合計の給与仕訳で記載しています(130,000×3%)。
実際の毎月の仕訳は、毎月の給料×3%(雇用保険料率)の仕訳となります。
(※2)年間合計で記載しています(130,000×9%)。
実際の毎月の仕訳は、毎月の給料×9%(雇用保険料率)の仕訳となります。
(※3)前払費用マイナス残高を「未払費用」に振替える仕訳です(前払費用プラス残高の場合は「仕訳なし」)。
 

(ご参考)

従業員からの預り分は「預り金」、会社負担概算計上分は「未払費用」で計上することも考えられますが、決算時のBS相殺処理が混乱してしまいますので、実務上、イメージしやすい仕訳で記載しています。
あくまで月次決算「損益重視」の観点、「概算分法定福利費」計上を優先し、BS表示の優先度合いを下げています。

 

5.労働保険料の申告時期・納期日

労働保険料の申告は、毎年6月1日から7月10日までに行います。

概算保険料額は、原則的に、7月10日までに納付しますが、
40万円以上の場合(or労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合)は、納付を3回に分割することができます
その場合も、過不足の精算は、第1期目の納付時にまとめて行います。

第1期(4月1日~7月31日)支払期限7月10日
第2期(8月1日~11月30日)支払期限10月31日
第3期(12月1日~3月31日)支払期限1月31日

 

6.参照URL

(労働保険料の損金算入時期等)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm

 

7.YouTube

 

YouTubeで分かる「労働保険の会計処理」
 

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