税金の豆知識
Q26 年末調整還付金の会計処理/仕訳・勘定科目は?預り金がマイナスに?
最終更新日:2022/01/26138191view
毎年、年末になると、「年末調整で従業員に税金を還付する際の仕訳」の質問が結構な頻度であります。
意外とややこしい論点です。
そこで今回は、まず「毎月の給与支払時の会計処理」を確認の後、「年末調整」の会計処理につき解説します。
目次
1.給与支払時・納付時の処理
まずは、給料支払時の「源泉所得税の処理」をおさらいします。
源泉所得税とは、従業員の「給料の所得税」につき、会社が毎月従業員給料から天引き、従業員の代わりに税務署に支払う税金です。つまり、源泉所得税は、会社が負担すべき税金ではありません。
あくまで、会社は、従業員から「預かったもの」を代わりに税務署に支払っているだけです。
また、給与支払時に「源泉」する金額は、あくまで「概算額」になります。
「年末調整時」に、各人ごとの所得税を再度計算し、給与支払時の「源泉概算徴収額」との差額を調整します。
これが「年末調整」と呼ばれるものです。
以下「例題」で解説します。
(例)
● 毎月の給料1,000、源泉所得税10
●源泉所得税の納税は毎月支払うものとする(納付特例適用なし)
借方 | 貸方 | 預り金残高 | |||
---|---|---|---|---|---|
毎月の給与支払時 | 給料 | 1,000 | 現金 預り金 | 990 10 | 10 |
翌月10日 | 預り金 | 10 | 現金(税務署へ) | 10 | 0 |
毎月の処理は以上となりますので、毎月10日に税務署支払後、「預り金残高は0」になっているはずです。
(納付特例の場合は、税務署への支払は年2回ですので、預り金は0になりません)
2.年末の処理
毎年12月に、会社が、各人ごとの年間所得税額を正しく計算しなおして、期中に概算で預かった所得税との差額を、従業員との間で精算します(12月給料で調整)。
(例)
● 12月にAさんが入社し、給料を支払うこととなった。
●12月の、Aさんへの給料支払は1,000、源泉所得税は10。
●給料を支払う対象は、Aさん以外いないものとする。
●年末調整の結果、Aさんには14返還することになった。
●簡便的に、社会保険、雇用保険の預り金は無視する。
借方 | 貸方 | 預り金残高 | |||
---|---|---|---|---|---|
12月の給料支払時 | 給料 | 1,000 | 現金 預り金 | 990 10 | 10 |
年末調整 | 預り金 | 14 | 現金(従業員へ) | 14 | △4 |
年末調整で従業員に14を返還した時点で、会社と従業員のやりとりは完全に終了します。
にもかかわらず・・「預り金」は△4で残っていますね。
なぜ預り金がマイナスで残るんでしょうか?・・実は、ここで「頭が混乱」してしまう方が多いんですね。
3.なぜ預り金残高がマイナスに・・?
上記例の場合、12月の源泉徴収額は、あくまでAさんの1ヶ月給料に対する額ですが、年末調整は、Aさんの1年間の税額の精算ですので、このようなこともありえます。
例えば・・12月に新しく入ってきた人の年末調整は、前職分も含めて行います。
この場合、前職の源泉所得税の過不足分も含めて、すべて新しい会社の方で還付します。
一方、新しい会社では、12月分の給料に対応する「源泉所得税」しか預かっていません。
したがって、このような場合は、12月給料で天引きした「預り金」以上に、従業員に返還する場合も大いにありえます。
4.預り金△4の意味
では、この「預り金」△4円は、一体何を意味するんでしょうか?
(1) 税務署に対する債権債務を示す
「源泉所得税」の性格を思い出してみて下さい。
源泉所得税は、本来、従業員が直接税務署に支払うべき税金を、会社が代わりに預かったり立て替えたりしているだけなので最終的に会社の「預り金」残高は、0になるはずです。
先ほどお伝えした通り、年末調整で従業員とお金を精算した時点で、会社と従業員の精算は完全に終了しています。
したがって、年末調整終了後に残った「預り金」マイナス残高は「税務署との債権債務」を示しているということになります。
プラスの預り金残高 | 会社が税務署に支払わなければならない「債務」 |
---|---|
マイナスの預り金残高 | 会社が税務署から返還してもらうべき「債権」 |
上記の設例では、会社が従業員から預かった額以上に、税務署に支払っている、つまり税務署から将来返還してもらうべき「未収入金」を意味しています。
(2)実際には返還されない
ただし、実際、税務署から4を返還してもらうかというと・・実務的には、お金を返金してもらう代わりに、翌年1月以降に税務署に納付する源泉所得税額から差し引いて納付する(=納付額を減らす)のが一般的です。
返金を受けるには、要件があったり手続きも面倒なんですね。
(充当に相当期間を要する場合は、税務署に還付請求するのが得策です)。
(3)実務的には?
預り金勘定のマイナスを未収入金に振替える方法もありますが、どちらでもかまいません。
ちなみに、私は預り金のマイナスで行っています。なぜなら、処理がシンプルですし、税務署からお金が返ってくるわけもなく、放っておいたらいずれ消えますので。
以下、すべてを「預り金」勘定で処理した場合の会計処理をまとめておきます。
5.仕訳まとめ
給与25日払(1,000)、源泉毎月10日支払(10)のケース
日付 | 借方 | 貸方 | 預り金 残高 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
12/25 | 給料 | 1,000 | 現金 預り金 | 990 10 | 10 | 12月分給料源泉 |
12/25 | 預り金 | 14 | 現金 (従業員へ) | 14 | △4 | 従業員とのやりとりは ここで終了 |
1/10 | 仕訳なし | △4 | 12月に預った源泉は 年末調整で0(税務署支払は0) | |||
1/25 | 給料 | 1,000 | 現金 預り金 | 990 10 | 6 | 1月分給料源泉 |
2/10 | 預り金 | 6 | 現金 | 6 | 0 | きれいになりました |
なお、12月決算の会社の場合は、決算数値が「預り金マイナス」になるのは変ですので、この場合は「未収入金」に振り替えます。
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