税金の豆知識
Q29【交際費課税除外】 売上割戻・販売奨励金とは?/広告宣伝費・販売促進費との違い/会計処理・消費税の取扱いは?
最終更新日:2025/01/2651000view

法人の場合、「交際費」については損金算入限度額が定められていますが、税法上の「売上割戻・販売奨励金・広告宣伝費・販売促進費」に該当すれば、交際費には該当しません。
しかしながら・・「交際費」に該当するかどうかの区分は、実務上判断が難しいです。
そこで今回は、交際費とその周辺の科目「売上割戻・販売奨励金・広告宣伝費・販売促進費」の違いにつき解説します。
目次
1.交際費とは?
交際費とは、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものです。(措法61の4③)
①事業に関連のある者(得意先・仕入先・株主等)への支出②取引円滑を目的とした接待・贈答という点が特徴的です。
交際費に該当する場合は、法人税上「損金算入限度額」が生じますので、周辺の科目、例えば「売上割戻」や「広告宣伝費」等との区別が重要になります。以下、それぞれとの違いにつきまとめます。
2.売上割戻・販売奨励金
売上割戻とは、取引先等に対して、事前の取り決めにより販売実績等に応じて支払われる費用(売上還元)のことです。
一方、販売奨励金とは、取引先等に対して、販売高等一定の基準に応じて支払われる費用(販売促進)です。
名称は異なりますが、両者の明確な区分は・・ほとんどありません。
(1)交際費との違い
どちらも、得意先に「金銭等」を渡すという点では「交際費」と似ていますが、一定の基準が要求される点や、対価が限定されるという点で異なります。
売上割戻・販売奨励金の要件は、以下の通りです。
【売上割戻・販売奨励金の要件】
支出の相手方 | 事業に関連のある得意先 ⇒先方役員等、支出の相手先が個人の場合は、交際費(措置法通達61の4(1)-15(9)) |
---|---|
一定の基準 | 販売高や、売掛金回収額等と比例した一定の基準 (営業地域の特殊事情や協力の度合い等も含む) |
対価 | 金銭・事業用資産 |
(2)原則 金銭・事業用資産での還元に限定
原則として、金銭・事業用資産(※)での還元に限定されます。
したがって、「物品での還元」「旅行等の招待」などは、原則として、接待交際費になります
なお、「商品券」は、上記の「金銭」には含まれません。商品券を渡した場合は、原則として「交際費」になります。
(※)事業用資産とは?
「事業用資産」とは、棚卸資産や固定資産等、事業に使用するものですので、「ゴルフクラブや釣り道具」のように、個人で利用できるもの事業用資産になりません。
(3)例外 少額物品(3,000円以下)
例外的に、購入単価3,000円以下の少額物品の場合は、物品での還元も認められます。
ただし、たとえ3,000円以下でも、商品券、買い物券など、引換物品の種類が特定されていないものは交際費になります(ビール券、図書カードのように引換物品の種類が特定されているものはOK)
(販売奨励金については、少額物品にかかる明確な規定はありませんが、内容が売上に係る対価の返還等である場合は、認められるものと考えます)。
(4)会計処理・消費税の取扱い
会計処理 | 売上のマイナス |
---|---|
消費税の取扱い | 売上に係る対価の返還等(課税取引) |
(5)一般消費者へのキャッシュバック・売上値引/紹介手数料との違い
名称 | 内容 | 会計・消費税区分 |
---|---|---|
一般購入者へのキャッシュバック・売上値引 | 一般購入者へのキャッシュバックは、当初販売契約等に基づき相手方に対価が支払われるもの。売上値引は、品物の数量の不足、品質が悪い等の理由で行うもの。 | 売上のマイナス(課税売上のマイナス・対価の返還) |
紹介手数料 | 紹介手数料は、事前契約に基づいて支払う手数料で、仲介業者など売上先に対するものに限らない(それ自体が取引先の収益となるもの) | 支払手数料(課税仕入) |
【商品券を渡すケース】
例えば、商品を購入した販売先に対して、キャッシュバックとして「商品券」を提供する場合は、当初の「売上のマイナス(課税売上のマイナス)」となります。
一方、「得意先」に対して、売上割戻において「商品券」を提供する場合は、売上割戻・販売奨励金の要件である、「金銭」での支出を満たさないため、接待交際費になります(消費税は対価の返還・課税売上のマイナスになるものと思われます)。
(6)特約店や代理店等の従業員に対する支出
なお、販売奨励金については、例外的に、上記の要件を満たさないものでも、損金(課税仕入)にできる取引が規定されています。下記の取引です。
【特約店や代理店等の従業員に対する支出】(租税特別措置法61の4(1)-7、15(9))
代理店専属のセールスマン等」 (所得税204条の規定で源泉徴収される者) | 取引量等に応じた謝礼的な金員(源泉徴収必要) |
---|---|
特約店・代理店等全従業員を対象 | 健康診断・生命保険料等(掛け捨てのみ)の負担 |
3.広告宣伝費・販売促進費
売上割戻、販売奨励金に該当しない場合でも、「広告宣伝費(販売促進費)」として、全額損金(課税仕入)にできる支出もあります。
広告宣伝費・販売促進費の両者に明確な違いはなく、どちらも売上増加を目的として、直接・間接的にかかった費用です。
例えば、商品試供品や展示会、キャンペーン費用、販売促進用景品・ノベルティ費用などが該当します。
金銭等を渡すという点で「交際費」と似ていますが、要件を満たす場合は「交際費」に該当しません。
(1)交際費/売上割戻・販売奨励金との違い
「不特定多数」を対象としたものは販売促進費(広告宣伝費)、事業関連のある「特定の取引先」に対するものは交際費となります。
例えば、取引先への一般的なプレゼント贈答は交際費となりますが、宣伝目的で、一般消費者等「不特定多数」に配布する目的で作成した「社名入りノベルティ商品」の贈答は、販売促進費(広告宣伝費)となります。
(2)広告宣伝費(販売促進費)の具体例(措置法61の4(1)-9)
・ | 抽選で、一般消費者に「金品を交付するため」or一般消費者を旅行、観劇等に招待するため」の費用 (得意先に対して旅行・観劇に招待した場合は交際費) |
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・ | 一般消費者に「金品引換券付販売」に伴い金品を贈るための費用 |
・ | 一定商品を購入する一般消費者を旅行や観劇に招待することをあらかじめ宣伝し、実際に招待する費用 |
・ | 商品を購入した一般消費者に贈る景品の費用 |
・ | 工場見学者等への製品試飲・試食費用 |
・ | 得意先等への見本品、試用品供与に通常要する費用 |
・ | 一般消費者へのアンケートやモニタに対する謝礼にかかる費用 |
・ | カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品(※)を贈与するために通常要する費用(措令37の5②一)。 |
(※)「これらに類する物品」とは、次の要件をすべて満たすものです(措通61の4(1)-20)。
●多数の者に配付することを目的
●主として広告宣伝を目的とする物品
●価額が少額(金額的な基準の記載はありませんが、3,000円基準が目安になると考えます)
少額の物品でも、配布先が不特定多数ではなく、得意先等の特定の者に渡す場合は「交際費等」となります。
(3)会計処理・消費税の取扱い
会計処理 | 販管費の「広告宣伝費」「販売促進費」 |
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消費税の取扱い | 課税仕入(課税取引) |
4.参照URL
(交際費等の範囲)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/08/08_61_4a.htm
(売上に対する対価の返還)https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/14/01/01.htm
(No.5260 交際費等と広告宣伝費との区分)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5260.htm
(消費者に対するキャッシュバックサービスの課税関係)https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/15/02.htm