税金の豆知識
Q31 PC・プリンター購入時の特例は?税務処理や勘定科目?~少額の減価償却資産の特例~
最終更新日:2024/04/0949686view
パソコンやプリンターなど、お仕事で利用するOA機器を購入する機会も多いですね。
これらは、経費にできるのか?固定資産で計上するのか?勘定科目や税務処理に迷う方もいるかもしれません。
今回は、これらOA機器購入にかかる会計処理と、「少額減価償却資産」の税務上の取扱いをまとめます。
目次
1.原則 固定資産で計上
パソコンやプリンターは、「固定資産」と呼ばれます。
こういった機器は、一般的に、支出年度だけでなく、3~4年程度は利用できるものが多いです。
したがって、税務上は、原則として「備品」(固定資産)で計上し、税務上定められた耐用年数に応じて「複数年度」で費用処理します。
2.特例
ただし、固定資産で計上し、耐用年数で費用処理していくは管理が大変です。
そこで、実務上の便宜を考慮し、金額小のものや、中小企業者等の場合、支出時一括経費or3年で経費にできる3つの特例が認められています。個人事業主も適用可能です。
(1) 3つの特例
①10万未満or使用可能期間1年未満 (少額の減価償却資産) | 一括損金算入可 | ●損金経理が要件 ●白色申告でもOK ●中小企業者に限られない。 |
---|---|---|
②取得価額が20万円未満 (一括償却資産) | 各事業年度ごとに一括し、3年で償却 | ●損金経理が要件 ●白色申告でもOK ●中小企業者に限られない。 ●「一括償却資産の損金算入に関する明細書」添付 |
③取得価額が30万円未満 (中小企業者等の少額減価償却資産特例) | 年間合計300万円まで一括損金可(事業年度が1年に満たない場合は月割) | ●損金経理が要件 ●青色申告の「中小企業者等」で、常時使用する従業員数が500人以下(連結法人除く) ●「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」添付 |
中小企業者のうち適用除外事業者(その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等)は除かれます。
(2)中小企業者等とは?
●資本金の額が1億円以下で以下に該当しない法人
・単一の大規模法人(※1)に発行済株式総数(※2)の1/2以上を所有されている
・複数の大規模法人(※1)に発行済株式総数(※2)の2/3以上を所有されている
(※1)大規模法人とは?
①資本金1億円超
②常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人
③大法人(資本金の額が5億円以上である法人等)との間に、その大法人による完全支配関係がある普通法人
④100%グループ内の複数の大法人に、発行済株式等の全部を直接または間接に保有されている普通法人
(※2)発行済株式とは?
発行済株式には、自己株式は除かれます。
なお、ここでの「中小企業者等」は、交際費等の損金不算入や貸倒引当金の特例で出てくる「中小法人」とは概念が異なりますので、ご留意ください。
(3)勘定科目は?
特に決まりはありませんが、消耗品費や減価償却費等でも構いません。
ただし、上記②③の場合は、「明細書」の作成が必要となりますので、他の科目と区別するため、新たに「備品費」等の科目を設けて集計するのもよいかと思います。
3.金額判定単位は?判定は税込み?
(1) 金額判定単位は?
通常取引される1単位ごとに判定。
ポイントは以下
●通常、単独での取引単位となるか?
●構造的・物理的に一体性があるかどうか。
機械及び装置 | 1台又は1基ごと |
---|---|
工具、器具及び備品 | 1個、1組又は1揃いごと |
構築物 | 単体で機能を発揮できないものは1工事ごと |
(国税庁での具体例)
●応接セット・・1組で判定(通常、テーブルと椅子が1組で取引されるため)
●カーテン・・部屋ごとに判定(1つの部屋で数枚が組み合わされて機能するため)
(ご参考~さいたま地裁判例H.16.2.4 内容要約)
●衣料品販売チェーンストアが、各店舗に「防犯用ビデオカメラ」を設置。
●防犯用ビデオカメラは、①監視カメラ②コントローラー③接続ケーブル④テレビ⑤ビデオで構成。
(監視カメラ・テレビ・ビデオは、家庭用製品と同じもの)
●上記①~⑤は1単位として判断しなければならないか?
(判決)
●テレビ・ビデオなどの家庭用製品は、通常「単独で取引単位」となるため、1品ごとに判定
(監視目的で一体使用されていても、常に一体、一資産として捉えることは合理的ではない)
●監視カメラ・コントローラー・接続ケーブルは、「一体」として、「店舗ごと」に判定。
(2) 判定は消費税込み?税抜き?
税込処理をしている会社なら税込、税抜処理の会社なら税抜で金額判定。
(3)取得価額の範囲は?
次の金額を合計した金額が「取得価額」となります。詳しくは、Q157をご参照ください。
●購入対価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他)
●事業の用に供するため直接に要した費用
(例)
搬入作業代、ソフト等導入設定作業代 | 取得価額算入 |
---|---|
租税公課(不動産取得税、自動車税、登録免許税等) | 取得原価算入しなくてOK |
借入金の利子 | 資産購入のためにのための借入利子は、算入しなくてOK |
(4)資本的支出・交換部品は対象に含まれない
30万未満の中小企業等の特例は、「新品資産の取得に限定」されます。
資本的支出に該当するものは対象に含まれません。例えば、既に使用している資産に係る交換部品の購入は、少額減価償却資産の適用はありません。
資本的支出か修繕費かという論点での判断となります。
4.償却資産税との関係は?
「中小企業の少額減価償却資産の特例」だけ、「償却資産税」の対象となります。
詳しくは、Q98をご参照ください。
(1)少額の減価償却資産 | 適用対象外 |
---|---|
(2)一括償却資産 | 適用対象外 |
(3)中小企業の少額減価償却資産特例 | 適用対象 |
5.適用順序は?
30万円未満の固定資産は、全部上記(3)中小企業の特例で損金にすればよいのでは・・?
と疑問に思う方もいるかもしれません。
しかし、(3)は年間300万までの上限がありますし、中小企業者、青色申告の要件があります。
また、(3)は、償却資産税の対象になるため、償却資産税の影響も考えなければいけません。
中小企業者、かつ青色申告事業者を前提とした場合に、よりよいと考えられる適用方法は以下となります。
10万未満 | 少額減価償却資産の規定により損金経理 |
---|---|
20万円以上30万円未満 | 中小企業の特例規定により損金経理 |
10万円以上20万円未満 | 中小企業特例か一括償却資産を選択適用(※) |
(※)とはいっても、300万までは、中小企業特例を選択したほうがお得なケースが多いと思います。
6.まとめ
取得価額 | 10万未満 | 20万未満 | 30万未満 | 30万以上 |
---|---|---|---|---|
取扱い | 全額損金 | 3年均等償却 | 全額損金 | 通常償却 |
限度額 | – | – | 300万以下 | – |
償却資産税 | 非課税 | 非課税 | 課税 | 課税 |
対象企業 | すべて | すべて | 中小企業者のみ | すべて |
7.参照URL
(少額の減価償却資産になるかどうかの判定)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403_qa.htm
(No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5432.htm
(一括償却資産を除却した場合の取り扱い)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/04/03.htm
(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
(少額の減価償却資産又は一括償却資産の取得価額の判定)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_01_02.htm
(減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5400.htm
8.YouTube
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