税金の豆知識
Q38【完全解説】社宅家賃の計算方法/具体例/駐車場・光熱費・住宅手当の取扱い/勘定科目や消費税
最終更新日:2024/06/2487587view
法人の社長で、自宅の家賃は会社の経費にできるの?って思われた方はいませんか?
答えは・・経費にすることが可能です。
法人には、一定範囲で「社宅」という恩典が認められています。
つまり・・「法人名義」で賃借、社宅として役員に転貸すると、法人で経費にできるだけでなく、個人側にも所得税がかかりません(個人事業主には、社宅制度はありません)。
(タックスアンサー NO2600、2597)要約
役員(使用人)に対して社宅等を貸与する場合は、役員(使用人)から1か月当たり一定額(以上)の家賃を受け取っていれば、給与として課税されません。
で、ここでの「一か月当たり一定額の家賃」は、かなり安く設定できるんです。
(なお賃貸借契約が「個人名義」の場合は、社宅とはなりません。個人が会社から家賃をもらうと、個人側で「所得税」が発生しますので、あまり節税にはなりません。)
目次
1.役員の場合
役員向けの社宅の場合、(1)小規模な住宅と(2)それ以外の住宅とに分け、計算方法が定められています
なお、240㎡を超えるようなものや、240㎡以下でも個人的趣味等を著しく反映した豪華なものは、役員社宅の取扱いが認められず、「通常相場並みの賃貸料」が家賃とされます。
(小規模な住宅とは?)
小規模な住宅は、下記に該当する住宅となります。
下記に該当しないものは「小規模でない社宅」となります。
法定耐用年数が30年以下の建物 | 床面積が132㎡以下 |
---|---|
法定耐用年数が30年を超える建物 | 床面積が99㎡以下 |
区分所有建物は「共用部分の床面積」をあん分し、専用部分の床面積に加えて判定
(1)小規模な住宅の場合
次の①から③までの合計額が「賃貸料相当額」になります。
① | (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2% |
---|---|
② | 12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡) |
③ | (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22% |
(2)小規模でない住宅の場合
その社宅が自社所有か、賃借物件なのかで「賃貸料相当額」の算出方法が異なります。
それぞれ、以下の金額が「賃貸料相当額」になります。
自社所有の場合 | {(建物固定資産税課税標準額)×12%(※)+(敷地固定資産税課税標準額)×6%} ×1/12 |
---|---|
賃借物件の場合 | 家主支払家賃の50% vs 上記(自社所有)で算出した賃貸料相当額のいずれか大きい金額 |
(※)法定耐用年数が30年を超える建物の場合は10%
(3)固定資産税課税標準額とは?
「固定資産税課税標準額」とは、地方税法の規定により、原則として「固定資産課税台帳に登録された価格」によるものとされています。
「固定資産課税明細書」には、「固定資産税評価額」と「固定資産税課税標準額」の記載がありますが、ここでの「固定資産税課税標準額」とは、「固定資産税課税標準額」ではなく、「固定資産税評価額」のことを指すため、注意が必要です。
家屋の場合は、「課税標準額」=「固定資産税評価額」となりますが、土地の場合は、住宅用地の評価の特例等の「負担調整措置」があるため、課税標準額は、固定資産税評価額よりも小さくなるケースが多いです(以下同様です)。
2.使用人の場合
次の①から③までの合計額が「賃貸料相当額」になります。役員の「小規模な社宅」と計算式は同じです。
① | (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2% |
---|---|
② | 12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡) |
③ | (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22% |
3.具体例
(例題)役員社宅 小規模住宅のケース
●法人が150,000円/月で賃借しているマンションを、社長に社宅として賃貸する
●マンション総床面積99㎡(建物法定耐用年数30年超)
●建物固定資産税の課税標準額5,000,000円
●敷地の固定資産税の課税標準額2,000,000円
(1)賃料相当額の計算
次の①~③の合計額が、基準となる1か月家賃となります。
① | 建物の固定資産税の課税標準額×0.2% | 5,000,000円×0.2%=10,000円 |
---|---|---|
② | 12円×(建物の総床面積(㎡)/3.3㎡) | 12円×(99㎡÷3.3㎡)=360円 |
③ | 敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22% | 2,000,000円×0.22%=4,400円 |
合計 | 14,760円 |
(2)結論
役員は会社に14,760円を支払えば、給与課税されません。
一方で、法人は、外部に毎月家賃を150,000円支払っていますので、支払家賃と受取家賃の差額135,240円(150,000円-14,760円)が実質経費となりますので、大きな節税効果がありますね!
なお、「固定資産税評価額」が分からない場合には、「会社が支払う家賃の50%以上を役員から徴収しておく」と、実質的に問題になることはありません。
4.仕訳・勘定科目・消費税の取扱い
上記3の「具体例」をもとに、仕訳を記載します
役員の給料は50万円とします(源泉・社保の仕訳は省略)。
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
家賃支払時 | 地代家賃(非仕) | 150,000 | 現金 | 150,000 |
給料支払時 | 給料 | 500,000 | 雑収入(非売) 現金 | 14,760 485,240 |
●法人は、地代家賃150,000-雑収入14,760円=135,240円が実質経費となります。
●消費税上、住宅貸付は「非課税」ですので、支払賃料、受取賃料ともに消費税「非課税」となります。
5.適正金額(賃借料相当額)を収受しなかった場合は?
●無償貸与or賃貸料相当額より低い家賃の場合は、受取家賃と賃貸料相当額との差額が給与課税されます(※)。(ただし、使用人の場合に、使用人からの受取家賃が、賃貸料相当額の50%以上の場合は、給与課税されません)
上記具体例をもとに、仮に、役員からの「受取賃料」が0円の場合は、賃料相当額(14,760円)-0円(受取家賃)=14,760円が給与課税されます。仕訳は以下の通り。
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
家賃支払時 | 地代家賃(非仕) | 150,000 | 現金 | 150,000 |
給料支払時 | 給料 | 514,760 | 雑収入(課売)(※) 現金 | 14,760 500,000 |
(※)役員に対する無償の譲渡等は「資産の譲渡等」に該当します(消基通5-3-5)。
したがって、本来受け取るべき賃料相当額は、消費税「課税売上」で認識します。
6.水道光熱費・社宅駐車場・住宅手当は?
項目 | 社宅家賃の対象か? | 消費税の取扱い |
---|---|---|
共益費 | 〇(住宅の賃料と同様の扱い) | 非課税(同左) |
水道光熱費 | 原則×(水道光熱費は生活費のため個人負担) | 課税 |
社宅駐車場 | ×(社宅駐車場は「社宅」には該当しないため) | 課税 |
住宅手当(※) | ×(住宅手当は「給与課税」) | 対象外(給与) |
●光熱費については、当該料金の額が①居住に通常必要であると認められる範囲内かつ②各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでない場合に限り、非課税(法解通36-26)
●駐車場代や水道料金料金が、住宅賃料に含まれているときは、原則として非課税取引として取り扱われます。
(駐車場については、車の所有に関わらず「1戸当たり1台以上の駐車スペース」が割り当てられている場合に限定)
●駐車場代と水道料金の従業員負担分を会社が一時的に「立替払い」するケースもあります。この場合は立替金(不課税取引)として処理することも認められています。
(※)入居者が直接契約している場合の家賃負担も、同様に「給与課税」されます。
7.(ご参考)固定資産税評価額の入手方法
賃貸物件の場合、通常は「固定資産税課税証明書」が手元にないと思います。
この場合は、市役所等で入手することが可能です。以下のどちらかの方法で入手します。
① | 直接「市税事務所」に行って「固定資産課税証明書」の写しをもらう。 |
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② | 「固定資産証明・閲覧申請書」を市税事務所に郵送し、課税証明を返送してもらう。 (郵送の場合は、手数料として、定額小為替固定資産1種類当たり300円分を同封) |
8.参照URL
(役員に社宅などを貸したとき)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm
(寄宿舎の電気料等)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/05/03.htm
(使用人に社宅や寮などを貸したとき)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm
(住宅の貸付 消費税の取り扱い)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6226.htm
(社宅に係る通常の賃貸料の額を計算する場合の固定資産税の課税標準額)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/04.htm