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Q226 残価設定型ローン(割賦購入) ・ 残価設定型リースの税務処理/会計基準との違いは?

最終更新日:2024/12/26

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Q227 残価設定型ローン(割賦購入) ・ 残価設定型リースの税務処理/会計基準との違いは?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

車を購入する場合、残価設定型ローン・残価設定型リースという形態の取引があります。
こういった取引の場合、将来下取り時の「残価保証額」が設定されており、当該「残価保証額」部分だけ毎月のリーン・リース支払額が少なくなります。一方で、「残価保証額」部分については、支払が発生しないことから、購入時の仕訳や消費税課税判断などにつき、疑問が生じます。
そこで今回は、残価設定型ローン・残価設定型リースの税務・会計処理につき解説します。
(リースは、所有権移転外ファイナンスリース、売買処理を前提にします)

 

1. 残価設定ローン・リースとは?

残価設定ローン・リースとは、あらかじめローン期間等満了時の下取価格(残価保証額)を決めておき、残価保証額を除いた金額を毎月支払う契約形態です。期間満了の際は、①車を返却して精算金を支払②車を買い取って買取代金を支払、どちらかの選択が可能です。
残価設定ローン・リースは、「残価保証額」部分だけ毎月の支払額が抑えられる点にメリットがありますが、同じ「残価設定型」でも、ローンとリースでは、会計処理・税務処理が異なります。以下、それぞれに分けて解説します。

 

2. 残価設定ローン(割賦購入)の税法上の取扱い

残価設定ローン(割賦購入)については、「残価設定がないローン」と、会計処理で異なる点はありません
車両購入時は、残価保証額部分も含めて「車両運搬具」で計上し、減価償却を行います。また、消費税は、取得時点で、残価保証額も含めて、全額「仕入税額控除」が可能です。

法人税の取扱い残価保証額も含めて、全額取得価額で計上し、減価償却可能
消費税の取扱い残価保証額も含めて、全額仕入税額控除可能

残価設定ローン(割賦購入)の税法上の取扱い

 

3. 残価設定ローンの具体例

● 本体50,000(税抜)の車両を、残価保証20,000(税抜)でローン購入した。
  ⇒支払総額は、残価保証額20,000を除いた30,000(税抜)
● ローン期間は60カ月 (毎月のローン支払額 500 + 消費税50)
● ローン期間終了時に買取は行わず、車両を返却した。車両の市場売却価額15,000との差額、5,000につき、現金で支払った(税抜) 。
● 耐用年数は5年、定率法(定率法償却率は0.4、償却保証率は0.108)。

 

(1) 購入時
借方貸方
車両運搬具(課税)
仮払消費税
50,000
5,000
長期未払金55,000

残価保証額も含めた本体価格で、「車両運搬具」を計上します。
消費税は、残価保証額も含めた金額が課税取引となります(=購入時に全額仕入税額控除が可能)
● 貸方「長期未払金」は、消費税込み55,000で計上します(消費税別区分でもOK)。

 

(2) ローン支払時(支払毎の仕訳)
借方貸方
長期未払金550現金550

● (50,000 – 20,000) ÷ 60カ月 = 500 (別途消費税50)

 

(3) 毎期末の減価償却
借方貸方
1年目減価償却費20,000車両20,000
2年目減価償却費12,000車両12,000
3年目減価償却費7,200車両7,200
4年目(※)減価償却費5,400車両5,400
5年目(※)減価償却費5,400車両5,400

● 定率法で償却します。
(※) 50,000×0.108(償却保証率)=5,400

 

(4) ローン期間満了時
借方貸方
長期未払金
 
支払手数料(課税)
仮払消費税
22,000
 
4,546
454
固定資産売却益(課税)
仮受消費税
現金
20,000
2,000
5,000

● 「残価保証額」で売却した処理を行います。売却時の簿価0円と、残価保証額20,000の差額を「固定資産売却益」で認識します(消費税課税取引)
● 一方、精算金5,000は、残価保証額が市場価額に満たない結果、負担する金額となるため、「支払手数料」で認識します(消費税課税取引)

 

(5) ご参考 残価保証額で買い取った場合

期間満了時に返却せず、残価保証額で買い取った場合の仕訳は、以下となります。

借方貸方
長期未払金22,000現金22,000

 

4. 残価設定リースの税務上の取扱い

(1) 法人税上の取扱い

リース資産の取得価額は、「支払リース料」の合計額となり、残価保証額は含まれません。つまり、取得時は、「残価保証額」を除いた額で「リース資産」を計上し、減価償却の合計額も、残価保証額を除いた額が上限となります。

 

(2) 消費税の取扱い

上記の取得価額の取扱いに合わせて、消費税上も、支払リース料総額が「消費税課税取引」となり、残価保証額部分は消費税課税対象にはなりません
ただし、リース契約終了時に契約当事者同士で精算する「精算金部分」については、消費税課税対象となります(消基通 9-3-6の4)。

リース資産取得時残価保証額を除いた部分消費税課税対象
残価保証額部分消費税課税対象外
精算金支払時(※)精算金支払部分消費税課税対象

(※)リース契約終了後、物件は貸し手に返還され、貸し手が第三者に売却します。その後に精算金額が確定し、貸し手から借り手に対して精算金が請求されます。

消費税の取扱い

 

(3) なぜ、リースとローンで処理が違うのか?

リースについては、消費税法上、 リース契約書等で収受するリース料総額(残価部分を除いた額)を、「リース資産の譲渡対価」とする、明確な規定があるためだと思われます。ローン(割賦購入)の場合は、たとえ「残価保証」がある場合でも、購入総額は、「残価設定のないローン購入額」と同額のため、通常のローン購入と同じ会計処理になります。

 

(4) 中小企業の場合

所有権移転外ファイナンスリースは、原則として「売買処理」となりますが、例外的に、中小企業の場合、「賃貸借処理」が認められています。この場合は、残価保証額を除いた支払リース料につき、支払時に経費処理を行いますので、今回の論点は出てきません

 

5. 残価設定リースの具体例

● 上記、「3.具体例」と同じ事例で、残価設定リースの場合の会計処理
● リースの会計処理は、原則処理(売買処理)とします。
● 減価償却は、リース期間定額法とします。

 

(1) 購入時
借方貸方
リース資産(課税)
仮払消費税
30,000
3,000
リース債務33,000

● 残価保証料額を除いた金額で、「リース資産」で計上します。
● 消費税は、残価保証額を除いた金額が課税取引となります。
貸方「リース債務」は、消費税込み33,000で計上します(消費税別区分でもOK)。

 

(2) リース料支払時(支払毎の仕訳)
借方貸方
リース債務550現金550

● (50,000-20,000)÷60カ月=500 (別途消費税50)

 

(3) 毎期末の減価償却
借方貸方
1年目減価償却費6,000車両6,000
2年目減価償却費6,000車両6,000
3年目減価償却費6,000車両6,000
4年目減価償却費6,000車両6,000
5年目減価償却費6,000車両6,000

● リース期間定額法で償却を行います。

 

(4) リース期間満了時
借方貸方
支払手数料(課仕)
仮払消費税(※)
4,546
454
現金5,000

● 精算金5,000は、消費税課税取引となります。

 

(5) ご参考

期間満了時に返却せず、残価保証額で買い取った場合の仕訳は、以下となります(法基通7-6の2-10)

借方貸方
車両運搬具(課仕)
仮払消費税
22,000
2,000
現金22,000

● 購入直前の取得価額(0)に、買取価額(22,000)を加算した金額22,000が取得価額となります(消費税課税取引)。
● 取得後の減価償却は、他の車両と同様の償却方法(法定 定率法)で償却します。ここでの耐用年数は、中古資産の見積耐用年数ではなく、新品の耐用年数を適用する点注意が必要です(法基通7-6の2-10新設 解説事例より)。

 

6. ご参考 残価設定リースに係る会計基準上の取扱い(上場会社等)

残価設定リースの場合、税務処理と、会計基準での取扱いは微妙に異なります。
リース会計基準では、残価保証額も、リース資産の取得価額に含めて処理を行い、残価保証部分は、「残存価格」とみなして減価償却の計算を行います。したがって、減価償却の金額は、「税務処理」と一致しますが、取得価額の会計処理が異なります
税務と会計を比較すると、以下の通りとなります。

残価設定リースに係る会計基準上の取扱い(上場会社等)

 

7. 参照URL

(所有権移転外ファイナンス・リース取引における残価保証等の場合の取扱い)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/38.htm

(リース取引の税務上の取扱いに関するQ&A【消費税編】)

https://www.leasing.or.jp/studies/docs/shohizeiQA.pdf

(リース期間終了の時に賃借人がリース資産を購入した場合の取得価額等)(法基通7-6の2-10)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_06_01_2.htm
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/7081/05.htm

 

8. YouTube

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この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
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