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Q228 【介護費用と医療費控除】 老人ホームや居宅サービス(介護保険制度)の支出で医療費控除の対象になるものは?/家政婦への支払や交通費・おむつ・介護用品は?

最終更新日:2025/02/12

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Q228 【介護費用と医療費控除】 老人ホームや居宅サービス(介護保険制度)の支出で医療費控除の対象になるものは?/家政婦への支払や交通費・おむつ・介護用品は?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

医療費を支払った場合、所得税上、一定額の「所得控除」(医療費控除)が認められます。
この点、老人ホームなどの施設料や、在宅居宅サービスの利用代には、「医療費」でない部分も含まれているため、どこまでが医療費控除の対象となるのか・・迷いが生じます。
今回は、「医療費控除」の対象となる「介護保険サービス費用」につき解説します。

 

1. 医療費控除とは?

医療費控除とは、個人の方が、1年間に支払った医療費が10万円(総所得金額200万円未満の場合は、総所得金額の5%)を超えた金額につき受けられる「所得控除」です。控除の上限は200万円まで認められ、確定申告が必要となります。
納税者本人だけではなく、「生計を一」の親族が支払ったものも対象になります。
詳しくはQ45をご参照ください。

 

2. 介護保険サービスは大きく2区分

介護保険制度で提供されるサービスは、大きく、①入所して施設でサービスを受ける「施設利用サービス」②自宅等で介護サービスを受ける「居宅サービス」の2種類に区分されます。サービスの多くは「医療費控除」の対象となりますが、医療費控除の対象外となるものもあります。以下、それぞれお伝えしていきます。

 

3. 施設利用サービスの医療費控除の対象

入所型の施設利用サービスは、①医療系サービスと②福祉系サービスの2種類に区分され、医療費控除の対象となる施設や支出が限定されている点が特徴です。

 

(1) 対象となる施設

医療費控除の対象となる施設は、要介護者が利用できる以下の4つとなります。

医療系施設サービス● 介護老人保健施設、(老健)
● 介護医療院
福祉系施設サービス● 指定介護福祉施設(特養)
● 指定地域密着型介護老人福祉施設(特養)

民間の有料老人ホームの用料は医療費控除の対象になりません。例えば、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、ケアハウスなどの施設サービス費は、医療費控除対象外となります。

 

(2) 対象となる支出&金額

「施設サービス月額利用料」のうち、介護費・食費・居住費が対象となり、日常生活費や特別なサービス費用は含まれません
また、医療系施設サービスは、自己負担額全額が医療費控除の対象となりますが、福祉系施設サービスは、1/2が医療費控除の対象になる点も特徴的です。
なお、居住費・食費については「医療費控除」の対象にはなりますが、「介護保険」の対象にはならない点も注意が必要です。

【医療費控除の対象まとめ】

施設名対象となる支出&金額対象外
医療系① 介護老人保健施設(老健)
② 介護医療院
施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)の自己負担額全額① 日常生活費(理美容代、歯ブラシ等)
② 特別なサービス費用
(自己都合個室使用料等)
福祉系③ 指定介護老人福祉施設
④ 指定地域密着型介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
施設サービスの対価(介護費、食費および居住費)の自己負担額2分の1相当額

高額介護サービスの払戻額は、医療費の金額から差し引いて医療費控除の計算をします。(特別養護老人ホーム等は、2分の1相当額を医療費の金額から差し引く)。

 

4. 居宅サービスの医療費控除の対象

施設に入居せず、在宅で利用する「居宅サービス」も、①医療系サービスと②福祉系サービスの2種類に区分されます。

 

(1) 対象となるサービス

「居宅サービス」のうち、①医療系サービスは医療費控除の対象となりますが、②福祉系サービス(生活援助中心)は対象になりません。以下の通りです。

対象となるサービス(医療系)対象外(福祉系)
● (介護予防)訪問看護
● (介護予防)訪問リハビリテーション
● (介護予防)居宅療養管理指導
● (介護予防)通所リハビリテーション
 (医療機関でのデイサービス)
● (介護予防)短期入所療養介護
 (ショートステイ)
● 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合)
● 看護・小規模多機能型居宅介護(上記を組み合わせたもの・生活援助中心型除く)
● 訪問介護(生活援助中心型)
● (介護予防)認知症高齢者グループホーム
● 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
● (介護予防)地域密着型特定施設入居者生活介護
● (介護予防)福祉用具貸与
● 看護・小規模多機能型居宅介護(生活援助中心型)
● 地域支援事業の訪問型・通所型サービス(生活援助中心型)
● 地域支援事業の生活支援サービス

 

(2) 対象となる支出&金額

「介護サービス料金」が対象となりますが、日常生活費(家賃・光熱費・食事代・美容代等)や特別サービス費用は含まれません
また、金額については、自己負担額全額が医療費控除の対象となり、介護施設のような1/2の規定はありません。

 

(3) ご参考 ~条件付きで医療費控除が可能なもの(福祉系サービス)~

福祉系サービスでも、医療費控除の対象となる医療系サービスと併せて利用する場合は、医療費控除の対象となるサービスがあります。以下の通りです。

【併せて利用する場合医療費控除の対象となるサービス】

訪問介護(生活援助中心型を除く)、夜間対応型訪問介護
(介護予防)訪問入浴介護
(介護予防)通所介護(地域密着型含む)、認知症対応型通所介護(デイサービス)
(介護予防)小規模多機能型居宅介護
(介護予防)短期入所生活介護(ショートステイ)
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(訪問看護を利用しない場合等に限定)
看護・小規模多機能型居宅介護(上記(1)のサービスを含まない組み合わせの分に限定)
地域支援事業の訪問型・通所型サービス(生活援助中心型除く)

なお、医療系サービスを併用しない場合でも、例えば、福祉サービス費用の中に、「喀痰吸引」などの「医療費用」が含む場合は、医療費控除の対象にできます。サービスを受ける際、施設側に「医療費控除」の対象となるか?確認しておくことをお勧めします。

 

5. 在宅療養の世話の支出は?

保健師、看護師又は准看護師に対する「療養上の世話」の対価 (所施令第207条第5号)は、「医療費控除」の対象となります。
また、上記の方以外に支払った「療養上の世話の対価」も、医療費控除の対象にできます(所基通73-6)。例えば、寝たきり老人の療養上の世話を、家政婦に依頼した場合の対価などです。療養の場所は、病院、自宅を問いません
ただし、領収書を見ても、「医療費控除」の対象となる「療養上の世話」なのか?単なる家事手伝いなのか?判別できないケースもあります。「療養上の世話」に該当する場合は、別途、市町村から、患者名、介護費用等が記載された証明書が発行されるようです(ホームヘルパーを派遣する市町村等の在宅介護サービスの供給主体等)。

 

6. 交通費やおむつ代は?

(1) 交通費

介護サービスを受けるための交通費も、医療費控除の対象となります。ただし、公共交通機関の交通費に限定され、タクシー代等は、原則として医療費控除の対象外になります。詳しくはQ45をご参照ください。

 

(2) おむつ代

6カ月以上寝たきりで、医師の治療を受けている方のおむつ代は、「自己負担額」が、医療費控除の対象となります。ただし、医師に「おむつ使用証明書」を発行してもらう必要があります。

 

(3) 介護用品購入費(松葉杖や補聴器等)

医師が必要と判断した介護用品、例えば、松葉杖や補聴器等の購入費用は医療費控除の対象です。
なお、介護用品のレンタル費用は、原則として医療費控除の対象になりませんが、種類によっては対象になるケースもあります。

 

7. 領収書に医療費控除の対象の有無が記載

上記の通り、医療費控除の対象かどうか?の判定は非常に複雑ですが、通常は、介護施設や、居宅サービス事業者が発行する領収書に、医療費控除の対象金額が記載されています。したがって、実務上は、当該記載金額にもとづいて医療費控除の判定を行います。

 

8. 参照URL

No.1125 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1125.htm

No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1127.htm

居宅サービスの対価に係る医療費控除について

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/010131/01/03.htm

在宅療養の世話の費用

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/44.htm

訪問介護の居宅サービス費

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/15.htm

寝たきりの者のおむつ代

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/54.htm

 

9. YouTube

Coming soon

 

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
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