税金の豆知識

Q73 スーツも経費になるけど・・?(特定支出控除って)

最終更新日:2022/01/17

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Q75 スーツも経費になるけど・・?(特定支出控除って)

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

 

1.サラリーマンの経費は?

自営業者だけでなく、サラリーマンの方にも、業務に「必要な経費」はありますよね。
例えば、仕事するためには・・「スーツ」も必要ですし、交通費を自腹で支払っている方もいるかもしれません。

 

しかし、実際、サラリーマンの方が経費を集計して「確定申告」されている方は・・あまりいません。なぜでしょうか?

実は、サラリーマンは「確定申告」しなくても、給与収入に応じた「経費」が自動で引かれていて、会社が「年末調整」で代わりに税額を計算してくれてるからなんですね。

 

サラリーマンは、公務員なども含めると、日本に5,000万人程度いると言われています。
これらの方が、全員確定申告すると・・税務署は大変ですし、個人側も「経費を集計」するのは、かなりの手間ですよね。

そこで、税務上は「給与収入」に応じた「経費」を一律に決めていて、個々人の税金計算時(=会社の年末調整時)には、「一律で決まっている経費を自動で差し引いてくれるしくみ」となっています。

この、「自動で差し引いてくれる経費」は、「給与所得控除」と呼ばれます。
サラリーマンの方は、自分で税金計算することがないので、知らない方も多いですね。

 

2.特定支出控除って?

しかし、現実的には、税法上で「一律に決められた給与所得控除」では、全然足りない!という方もいるんですね。
そこで、こういった方に対して、「給与所得控除」ではなく、「個々人が経費を集計して確定申告できる制度」が認められています。これが、「特定支出控除」という制度です。
 
H24年に改正され、多少は使いやすいものになりましたが、経費にできる支出が限定されている点が特徴です。

 

3.特定支出控除にできる「支出」の種類

全部で8つ認められています((6)~(8)は合計65万円までの制限あり

(1)通勤費通勤費(会社負担分以外)
(2)転居費用転勤の際の引越費用(会社負担分以外)
(3)単身赴任者の帰宅旅費単身赴任者が自宅に帰る場合の旅費(会社負担分以外)
(4)研修費業務で必要な研修費用(会社負担分以外)
(5)資格取得費用業務に必要な資格取得費用。
⇒例えば、士業(医師、弁護士、公認会計士など)、
自動車免許、英語検定など。
(6)図書購入費用業務に関する図書、雑誌、新聞などの費用
(7)衣類購入費用業務に関する制服、事務服や、スーツなど
(8)交際費業務に関連する接待料金など(会社負担分以外)。
⇒保険会社の方や営業の方は、個人で負担する部分も多いかもしれません。

 

4.「特定支出控除」が認められる場合は?

でも・・実際に「特定支出」があっても、全額が経費で認めてくれるわけではありません。以下の要件があります。

 

「特定支出」>「給与所得控除」×1/2

 

上記で、給与所得控除×1/2を超えた部分が「特定支出控除」として差し引けます。

式を見ると、「給与所得控除」との比較で決まるので、「給与所得控除の額」がポイントになるのがわかりますね。

 

5.給与所得控除の額は?

給与所得控除(収入に応じた経費)は、以下のような感じで定められています.。この表を見ると、実は意外とサラリーマンって、「何もしなくても最初から認めてもらっている経費が多い」のがわかりますよね。

給与収入給与所得控除の額
65万未満65万
65万以上180万以下収入額×40%
180万超360万以下収入額×30%+18万
360万超660万以下収入額×20%+54万
660万超1,000万以下収入額×10%+120万
1,000万超220万(上限)

(具体例)給与収入年間500万円。特定支出が年間100万円ある方。

(1)給与収入500万円の「給与所得控除」の額

500万×20%+54万=154万
⇒つまり、年収500万のサラリーマンは、最初から154万の経費が認められていて、税金計算時は、500万―144万=356万からスタートしているということです。

(2)特定支出控除の額

特定支出額100万円 > 154万×1/2=77万 ⇒ 超えた分「23万円」が特定支出控除となります。

 

6.確定申告が必要?

「特定支出控除」を受けるには、確定申告が必要となります。

その際、会社側からの証明書類が必要となります。

 

7.現実的には?

平成24年度の税制改正で使いやすくなったといっても・・現状の「特定支出控除」の利用者は、2, 3千人程度といわれています。日本全国で5,000万人程度のサラリーマンがいるとして?使ったのは0.006%です・・ なぜでしょうか?

先ほどの例で説明すると・・「自腹で100万も経費を使う方」なんて、なかなかいないですよね。
裏返すと、元々認められている「給与所得控除」が結構あるってことも言えますね!

 

あるとすれば・・「資格取得費」くらいでしょうか。会計士の専門学校は「年間60万くらい」だったような気がするので、年間でこれくらいの支出があれば、もしかしたら「特定支出控除」がでてくるかな?という程度です。

ただし、単に自分の勉強用に通うのではダメで、職務(仕事)に直接必要である場合に限られます。しかも、最後は、会社から証明書類ももらわないといけないので・・やはりなかなかハードル高いような気はします。

 

参照URL

(特定支出控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm

 

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