税金の豆知識
Q85 外注立替交通費等の消費税請求は?源泉所得税は?請求書記載例
最終更新日:2022/01/26192729view
例えば、外注を請け負った場合、最終的に、「交通費」や「宿泊費」などの立替分を外注元に「精算請求」するケースってありますよね。この場合、「消費税」分を請求できるのか?って悩まれたことありませんか?
「立替」なんで、消費税なんてかからないのでは・・?
でも、領収書見ると「宿泊代」には消費税も含まれてる感じだな・・など悩まれるかもしれませんね。
今回は、立替で支払った交通費等の「消費税」及び「源泉所得税」の取扱いをまとめます。
目次
1.消費税は課税される?
まず、前提知識として「交通費」「宿泊費」にそもそも消費税がかかるのか?という論点です。
「交通費」や「宿泊費」は、たとえ立替で支払ったとしても、「消費税」がかかります。
したがって、立替分でも、原則としてご自身が支払った金額は「課税仕入」、外注元に請求した金額は「課税売上」となります。
ただし、こういった立替金を、通常の「請求書」と別に、「立替金精算書」などで実費精算する場合(外注元名義の領収書添付)は、本来、外注元が支払うべきものを、単に立替払しただけですので、立替金(消費税対象外)処理、外注元は「課税仕入」で処理を行います。
2.内税?外税?
次に、消費税の表記です。
「宿泊費」は消費税が明記されていて外税表示になっていることが多いので、わかりやすいですね。
一方、「交通費」、一般的に「消費税」は明記されていませんが、消費税が課税されています。
つまり・・内税なんですね。
電車代やタクシー代などで支払った金額には、既に「消費税が含まれている」とお考え下さい。
3.請求書の記載方法
次に、請求書の記載方法です。
「立替交通費」等を先方に請求する場合、「請求書」には、どうやって記載すればよいのでしょう?
「税抜で本体を記載」して、「消費税を別途記載」するような請求書の場合、特に混乱されるかもしれません。
おさらいになりますが、どちらも、支払った額には「消費税」が既に含まれていますので、支払額に上乗せして「消費税」を請求することはできません。
この点、宿泊代は「外税」ですので、分かりやすいと思います。
単純に支払時の領収書等を見ながら、「税抜額」を記載すれば終了です。
一方、交通費の場合は、「内税」ですので、どう記載するか?悩まれるかもです。
宿泊費と同様、「支払った額」に上乗せして消費税請求はできません。
ですので、請求書の本体には、支払額ではなく税抜額(支払額÷1.1)を記載します。
この結果、消費税込みの請求額は、「立替払で支払った額」と一致します。
「立替交通費」を請求書に記載する場合は、ちょっと注意しましょう。
4.源泉所得税はどうやって計算?
例えば、フリーランスの方が講師などをした場合、「源泉所得税」を差し引いて請求書を作成する場合もありますね。
この場合、本体の講師料以外に、「立替交通費」や「消費税額」などの項目がある場合、「源泉所得税」の税率はどの額にかけるのか??交通費を含めた額?消費税を含めた額?・・悩みどころですね。
(1) 交通費等の取扱い
立替交通費も、原則として、報酬料金に含まれます。
つまり、交通費を含めた額に、源泉所得税率を掛け合わせます(所基通204-4)。
ただし、明らかに「立替分」と判別される、以下の項目は除外できます。
● 登記、申請をするための登録免許税、手数料等(弁護士や司法書士など)
● 通常必要な範囲内の交通費、宿泊費等を支払者が直接、交通機関やホテル等に支払う場合
なお、フリーランスの場合でも、交通機関やホテル等から「会社宛(外注元名義)の領収書」を受け取って精算する場合は、実態として支払者が直接支払われたものと同視できるため、源泉徴収不要ということのようです
(税務通信NO3615)。
逆に言うと、個人宛の領収書だと、原則通り、源泉徴収が必要ということになりますね。
(2) 消費税の取扱い
消費税を明確に区別した請求書であれば、「消費税を除いた額」に源泉所得税率をかけ合わせれることができます。
5.請求書の事例
本体価格10,000円(税別)、別途立替交通費2,000円(税込)を請求する場合の「請求書」は、こんな感じになります
(源泉所得税率は10.21%とします)
(1) 原則
原則的な取扱いは、交通費にも源泉所得税がかかりますので、以下のような請求書となります。
内容 | 金額 | |
---|---|---|
本体請求分 | 10,000円 | |
交通費 | 1,818円 | ※1 |
源泉所得税 | △1,206円 | ※2 |
差引 | 10,612円 | |
消費税 | 1,182円 | ※3 |
請求額 | 11,794円 |
※1 交通費は税込2,000円支払⇒税抜額は?
⇒÷1.1=1,818円(消費税 182円)
※2 交通費には、「源泉所得税」がかかります。
一方、消費税は別建てされているため、「源泉所得税」がかかりません。
つまり、源泉所得税の課税対象は、「本体請求分+交通費」となります。
⇒(10,000円+1,818円)×10.21%=1,206円
※3 「本体+交通費」にかかる消費税
⇒(10,000円+1,818円)×10%=1,182円
(2) 例外
立替金の領収書名義を、会社宛(外注元名義)で入手した場合の場合は、交通費部分から源泉徴収を行う必要がありませんので、以下の請求書になります。
内容 | 金額 | |
---|---|---|
本体請求分 | 10,000円 | |
交通費 | 1,818円 | ※1 |
源泉所得税 | △1,021円 | ※2 |
差引 | 10,797円 | |
消費税 | 1,182円 | ※3 |
請求額 | 11,979円 |
※1 上記同様
※2 会社宛ての領収書の場合、交通費には、「源泉所得税」がかかりません。
また、消費税も別建てされているため、「源泉所得税」がかかりません。
つまり、源泉所得税の課税対象は、「本体請求分」のみとなります。
⇒(10,000円)×10.21%=1,021円
※3 「本体+交通費」にかかる消費税
⇒(10,000円+1,818円)×10%=1,182円
6.参照URL
~実費弁償金の課税~
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/12.htm
~弁護士や税理士等に支払う報酬・料金~
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2798.htm
~ホテルの客のタクシー代の立替払~
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/11.htm
7.YouTube