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Q92 リース取引解約時の会計処理/消費税の取扱い(借り手)残存リース料の取扱いは?

最終更新日:2022/02/01

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Q92 リース取引解約時の会計処理/消費税の取扱い(借り手)

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

所有権移転外ファイナンスリース取引を「期間満了前に解約」した場合、通常、「残存リース料」を支払います。
この残存リース料にかかる「借り手」の会計処理と「消費税の取扱い」はどうなるでしょうか?

残存リース料の「請求書」には、「消費税が記載」されている場合がありますので、解約時の消費税の取扱いは、意外と迷いやすい論点です。リースにかかる会計処理は「原則法」「例外法」の2種類があり、解約時の会計処理や「消費税」の取扱いは、両者で大きく異なります。

今回は、所有権移転外ファイナンスリース取引を「中途解約」した場合の税務処理を解説します。

 

1. 残存リース料の消費税の取扱い

「残存リース料」の実質的な中身は、解約時点での「未払リース料」です。
つまり、「リース資産の対価」を構成するものです。ここがポイントです。

 

(1) 原則処理(売買・契約時に全額消費税を控除)

原則処理の場合は、リース取引開始時に、「リース資産及び債務」を計上し、この時点でリース料総額に対応する消費税全額の「仕入税額控除」が行われています。

つまり、解約時に支払う残存リース料(未払リース料)部分は、既に仕入税額控除は終わっています。したがって、残存リース料支払取引は「消費税課税対象外」となります。(単に開始時に計上した「リース債務の返済」に過ぎない)

 

(2) 例外処理(賃貸借・消費税は支払時に分割控除)

例外処理で「分割控除」を行う場合は、リース料支払ごとに、「支払リース料」を計上し、当該支払額に対応した消費税だけ「仕入税額控除」が行われています。

つまり、解約時に支払う残存リース料(未払リース料)部分は、「仕入税額控除」がまだ行われていません。したがって、残存リース料支払取引は、「消費税課税対象」となります。

 

(3) 原則と例外を比較

会計処理は異なりますが、(1)(2)どちらであっても、リース期間全体で考えた場合の「仕入税額控除」の対象となる総額は同額となります。
 

2.会計処理

● リース料総額6,600千円(税込)
● リース期間60か月。60回払い(110千円(税込)/月×60回)
● 利息部分は「契約上」明記されていない。
● 12カ月支払った時点で中途解約を行い、残存リース料5,280千円を支払った。
減価償却は12か月分計上するものとする。
● 所有権移転外ファイナンスリースとし、「例外処理」での消費税はリース料支払時に分割控除を採用する。

 

(1) 原則処理(売買・契約時に全額消費税を控除)(単位:千円)
借方貸方
取引開始時リース資産(課税)
仮払消費税
6,000
600
リース債務6,600
リース料支払時(支払毎)リース債務110預金110
減価償却費の計上減価償却費1,200リース資産1,200
解約時(※)リース資産除却損(対象外)
リース債務(対象外)
4,800
5,280
リース資産
預金
4,800
5,280

(※)取引開始時に既に「リース料総額」に対する消費税は全額「仕入税額控除」済。
したがって、解約時に支払う残存リース料(=未払リース料)は、単に「リース債務」の減少であり、「消費税課税対象外」となります。

 

(2) 例外処理(賃貸借・消費税は支払時に分割控除)(単位:千円)
借方貸方
契約時仕訳なし
リース料支払時(支払毎)リース料(課税)
仮払消費税
100
10
預金110
減価償却費の計上仕訳なし
解約時(※)リース解約損(課税)
仮払消費税
4,800
480
預金5,280

(※)解約時点までには、支払リース料に対応する消費税部分のみ「仕入税額控除」が行われ、未払部分は、まだ「仕入税額控除」が行われていません。したがって解約時に支払う残存リース料(=未払リース料)は、「消費税課税対象」となります。

 

3.残存リース料を支払わず、減額される場合

中途解約の場合、「残存リース料」を支払わず、減額される場合があります。
この場合の消費税の取扱いは、以下の3つのパターンとなります。

パターン取扱い理由
賃借人の原因による解約(倒産・支払遅延等)でリース資産を返還資産の譲渡代物弁済(金銭等に代えてリース資産で弁済)により消滅する債務の額として取り扱う
リース物件滅失・毀損修復不能による解約仕入対価の返還等リース料の値引きとして取り扱う。
物件の陳腐化による借換え等による合意解約&現物廃棄

●「課税売上」となるのか?「課税仕入」のマイナスになるのかの違いはありますが、消費税納税額に与えるインパクトは同じです(課税売上割合に影響がある点のみ)。
●原則法、例外法どちらであっても、インパクトに違いはありません。
 

4.解約時にリース資産を返還する場合の仕訳

●上記とまったく同じ例題
●12カ月支払時点で賃借人の原因による中途解約を行い、リース資産を返還し、残存リース料の支払は免除された。

 

(1) 原則処理(売買・契約時に全額消費税を控除)(単位:千円)
借方貸方
買取時(※)リース債務(対象外)5,280リース資産
仮受消費税
4,800
480

(※)解約・リース資産返還時は、リース資産での代物弁済として課税資産の譲渡と取り扱われます。
 

(2) 例外処理(賃貸借・消費税は支払時に分割控除)(単位:千円)
借方貸方
買取時(※)リース解約損(課税)
仮払消費税
4,800
480
リース売上(課税)
仮受消費税
4,800
480

(※)理屈上の仕訳を記載しています。解約の場合同様、当初の残存リース料(=未払リース料)部分にかかる「仮払消費税」を計上し、リース資産譲渡部分は、代物弁済として、売上、仮受消費税の計上となります。
ただし、損益インパクトはありませんので、個人的には仕訳なしでもよいかな・・と思います。

 

5.違約金

残存リース料と別に、損害賠償的な「違約金」がある場合は、違約金部分は消費税「不課税」となります。
ただし、名称で判断するわけではない点に注意しましょう。
例えば、リース契約を中途解約時に「解約損害金」という名称で請求書が届く場合があります。この場合、たとえ「損害金」という名称でも、実質内容が「資産の譲渡」に当たる場合は「課税取引」となる場合もあります。

 

6.参照URL

(所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る残存リース料の取扱い)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/37.htm

(賃借人が分割控除している場合の残存リース料の取扱い)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/16/24.htm

(損害賠償金)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6257.htm

 

7. YouTube

 
YouTubeで分かる「リース取引解約時の会計処理」
 

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