税金の豆知識
Q101【非営利型】一般社団法人の法人税課税対象と非営利型の要件・収益事業34業種とは?確定申告での提出書類は?
最終更新日:2023/04/2066594view
株式会社は、営利を目的(利益分配)とした団体(営利法人)のため、すべての所得に課税されます。
一方で、一般社団法人等については、営利を目的としない団体(非営利法人)のため、一律すべての所得に課税されるのは適切ではありません。そこで、法人税上、一般社団法人を①普通法人型②非営利型の2種類に区分し、それぞれの区分ごとに「法人税の課税範囲」を定めています。
今回は、一般社団法人の法人税の課税範囲や、非営利型の要件等を中心に解説します。
(なお、「収益事業」の範囲に関する実務上迷いやすい事例は、別途、Q193でまとめておりますので、今回は、非営利型の要件等を中心にお伝えします)。
目次
1. 法人税上の一般社団法人の区分
(1)一般社団法人も収益事業は可能
一般社団法人は、公益や社会貢献等を目的とした非営利法人ですが、収益事業が禁止されるわけではありません。あくまで非営利法人とは、原則として、剰余金の配当が禁止されているにすぎず、収益事業を行うことや、給与等を支払うことも認められます。
例えば、公益実現のための「投資資金」を確保するため、収益事業を行い「利益を獲得」することも当然に認められています。獲得した利益を、原則として「配当」できず、次年度以降の活動のために使う点が、一般社団法人の特徴となります。
(2)一般社団法人の区分は2種類
法人税上は、「収益事業」に課税するという考えが背景にあります。そこで、法人税上、一般社団法人を①普通法人型と②非営利型の2種類に区分し、それぞれの課税範囲を定めています。普通法人型は、普通に「収益事業」を行う法人、非営利型は、基本的には「収益事業」をあまり行わない法人のイメージです。それぞれの課税範囲は以下となります。
種類 | 課税対象 | |
---|---|---|
(1) | 普通法人型 | すべての所得 |
(2) | 非営利型 | 収益事業から生じた所得のみ |
つまり、一般社団法人は①非営利型かつ②収益事業を行っていなければ、法人税は課税されず、確定申告は不要となります。したがって、「非営利型」の要件や、「収益事業の範囲」が論点となります。
2. 非営利型法人の種類・要件
(1)非営利型法人はさらに2区分
非営利型法人は、さらに、以下の2つに区分されます。
非営利性が徹底された法人 | 事業利益を得ることや、利益の分配を目的としない法人(会費等なし) |
---|---|
共益的活動を目的とする法人 | 会員間の支援・交流等の共通利益を得るために活動する法人(会費あり) |
どちらも、「非営利」を目的とする法人となる点に違いはありませんが、その目的が若干異なるため、それぞれの種類ごとに、法人税上、「非営利型法人」に該当するための要件が「別々」に規定されています。
(2) それぞれの要件
①【非営利性が徹底された法人の要件】
「非営利性が徹底された法人」は、名前の通り「非営利性」を徹底した組織であることから、以下の要件を満たす必要があります(法人税法2九の二イ、法人税法施行令3①)。
① | 定款に以下の定めがあること。 ●剰余金の分配を行わない。 ●解散時の残余財産は、国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与する。 |
---|---|
② | 上記①の定款の定めに違反する行為(特定の個人or団体に特別の利益を与えることを含む)を行うことを決定or行ったことがないこと。 |
③ | 理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の1/3以下であること。 |
②【共益的活動を目的とする法人の要件】
「共益的活動を目的とする法人」は、会員に共通する利益を得ることが目的であり、特定の者の利益を目的とすることはできないため、以下の要件を満たす必要があります(法人税法2九の二ロ、法人税法施行令3②)。
① | 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること。 |
---|---|
② | 定款に会費の定めがあること。 |
③ | 主たる事業として収益事業を行っていないこと。 |
④ | 定款に以下の定めがないこと。 ●特定の個人や団体に剰余金の分配を行う ●解散時の残余財産を特定の個人や団体に帰属させる |
⑤ | 特定の個人or団体に特別の利益を与えることを決定or与えたことがないこと。 |
⑥ | 理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の1/3以下であること。 |
(3) 両者の比較
非営利性が徹底された法人の要件①と、共益的活動を目的とする法人④を比較すると、以下となります。
非営利性が徹底された法人 | 共益的活動を目的とする法人 |
---|---|
定款に以下の定めがあること。 ●剰余金の分配を行わない。 ●解散時の残余財産は、国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与する。 | 定款に以下の定めがないこと。 ●特定の個人や団体に剰余金の分配を行う ●解散時の残余財産を特定の個人や団体に帰属させる |
非営利徹底型は、剰余金の分配は行えず、解散時の残余財産は、国等への贈与が必要となります。一方、共益活動型は、剰余金分配や、解散時の残余財産を特定の個人等へ帰属させることを定款に定めることが不可と規定されているのみで、必ずしも、分配禁止、残余財産を国等に贈与する必要はありません。つまり・・共益目的型では、解散時に残余財産を分配することも可能な点で、要件が緩くなっていることがわかります。
(3)ご参考~親族等・特別の利益の供与とは?~
親族等とは、①配偶者②3親等以内の親族③その他一定の特殊の関係のあるもの(その理事が所属する別組織の使用人、生計を一にするもの等)を指します(以下同様)。
「特別の利益の供与」は、法人税上「具体例」が例示されています(法基通1-1-8)。収益事業に限らず、収益事業以外の事業において行われる経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付が含まれます。
法人⇒特定の個人又は団体 | 特定の個人又は団体⇒法人 |
---|---|
●土地、建物その他の資産の無償or低額賃貸 ●無利息or低利での金銭を貸付 ●資産の無償or低額譲渡 | ●土地、建物その他の資産の高額賃借 ●高利での金銭借受 ●資産の高額譲受or法人の事業の用に供すると認められない資産の取得 |
(4)異動届
非営利型法人になったときや、非営利型から営利型になったときは、税務署に「異動届出書」と「定款」を提出します。したがって、非営利型の場合は、あらかじめ要件を満たす定款を作成しておく必要があります。
3. 収益事業の範囲
(1)法人税上の収益事業とは?
法人税上の「収益事業」とは、下記34業種に該当する事業で、かつ「継続して」「事業場を設けて」行われるものと規定されています(法人税法2条13項、法令5条1項、法基通15-1-1~8)。
収益事業に「付随して行われる行為」も、収益事業に含まれます(法基通15-1-6)。
当該業種は限定列挙とされ、「上記34業種に該当しない」場合は、法人税がかかりません。
(2)34業種とは?
法人税法に規定される収益事業34業種は、以下の通りです。
物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保険業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産権の提供等を行う事業、労働者派遣業
収益事業の判定につき、実務上迷いやすい事例は、別途Q193でまとめておりますので、こちらをご参照ください。
4. 確定申告書作成時の留意事項・添付書類
一般社団法人で、「確定申告」が必要な場合、原則として、税務署等に必要な提出物は、一般的な「株式会社」と変わるところはありません。
ただし、上記の通り、一般社団法人は普通法人と異なる点があるため、確定申告書の内容や、税務署に添付する決算書等につき、若干異なる点があります。以下の通りです。
提出物 | 記載事項 | 株式会社 | 一般社団法人 |
---|---|---|---|
法人税申告書 | ・別表2出資欄 ・別表5(1)資本の部 | 記載 | 空欄で可 |
地方税申告書 | ・均等割 | 資本金や従業員数に 応じた税率 | 最低の税率で可 |
決算報告書 | ・貸借対照表 ・損益計算書 ・株主資本等変動計算書 | 全事業の決算書が必要 | 収益事業に関する 部分のみでOK |
5. その他の税金の取扱い(消費税・県民税・市民税)
(1)消費税の取扱い
消費税に関しては、普通法人型、非営利型どちらであっても、基準期間の課税売上高が1,000万を超えた場合、申告納税義務が発生します。他の会社と変わるところはありません。
ただし、一般社団法人では、「補助金や寄付金」など、対価性のない収入が多く計上されます。そこで、消費税納税額の計算上、「仕入税額控除」につき、一定の調整計算が行われます。詳しくは、Q105をご参照ください。
(2)県民税・市民税均等割の取扱い
都道府県や市町村には、毎年一定額の「法人住民税均等割」を納める必要があります。
ただし、多くの自治体で「収益事業を行わない」など一定の条件をもとに「均等割」が免除される場合があります。
各自治体によって取扱いは異なりますので、各自治体への問い合わせが必要です。
一般社団法人・NPO法人・一般財団法人の設立は、こちら
6. 参照URL
● 一般社団法人・一般財団法人と法人税
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/koekihojin/01.htm
● 収益事業の範囲(法基通15-1)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/15/15_01_01.htm
● 特定収入がある場合の仕入控除税額の調整(消費税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6495.htm
7. YouTube
YouTubeで分かる「法人税課税対象と非営利型の要件・収益事業34業種」
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