税金の豆知識
Q106【令和4年改正】法人寄付金の損金算入限度額は?/交際費との違いや消費税の取扱い/企業版ふるさと納税とは?
最終更新日:2023/07/0762628view
個人の方だけでなく、法人についても、一定の場合、寄付金につき「損金算入」が認められています。
ただし、「寄付金」は、基本的に対価性はありませんので、無制限に「損金算入」が認められているわけではありません。
法人税上、寄付金の内容等に応じた「損金算入限度額」が定められています。
今回は、法人が寄付した場合の「損金算入限度額」についてお伝えします。
目次
1. 個人の寄付金や交際費との違い
寄附金とは、金銭、物品その他経済的利益の贈与又は無償の供与をいいます。
(1) 個人の寄付金(所得税)との違い
個人の場合は、すべての寄付金が損金に算入できるわけではなく、特定寄付金(支出先が、国、地方公共団体、公益法人や特定公益増進法人など)のみが寄付金控除の対象となります。
一方、法人の場合は、神社やお寺などに対する一般の寄付金であっても、「損金算入限度額」の範囲内で、損金算入が認められています。
(2) 交際費との違い
「交際費」と「寄付金」の区分が難しいところですが、実務上は、支出した相手先によって、「接待交際費」か「寄附金」の区分は行われます。
どちらに該当するか?で「損金算入限度額」が異なってきますので、注意が必要です。
接待交際費 | 取引先(売上先・仕入先等)に対する接待や贈答など |
---|---|
寄付金 | 取引関係のない相手(行政や学校、事業団体や神社等)への金銭や物品の贈与 |
2. 寄付金の種類と損金算入限度額
寄付金の種類は、大きく下記3つに分かれます。種類に応じた「損金算入限度額」が定められています。
種類 | 例示 | 損金算入額 | |
---|---|---|---|
① | 「国又は地方公共団体に対する寄附金」 「指定寄附金(財務大臣指定)」 | ● 国・地方公共団体に対する支出 ● 国公立学校への寄付(災害復旧・増築等) ● 日本学生支援機構に対する寄付金(学資貸与) ● 日本赤十字社(財務大臣指定のもの) ● 共同募金(赤い羽根) ● 日本赤十字社義援金等(被災者配分) | 全額損金算入 |
② | 特定公益増進法人等 に対する寄付金 | ● 公益社団法人・公益財団法人 社会福祉法人・更生保護法人に対する支出 ● 独立行政法人に対する支出 ● 日本学生支援機構・日本赤十字社(上記①以外) ● 認定NPO法人への支出 | 一部損金算入 |
③ | 一般の寄付金 | ● 政治団体・町内会・宗教法人への寄付 ● 経済的利益の供与・低額譲渡等 | 一部損金算入 |
ただし、100%グループ内法人間の寄附金は、グループ法人税制により、全額損金不算入となります
3. 「損金不算入額」の計算方法
上記の①は「全額損金算入」となりますが、②③は「損金算入限度額」が定められています。ですので、「寄付金損金不算入額」は、以下の式で計算されます。
上記①~③支出寄付金合計 -(①の支出額 + ②③の損金算入限度額)
以下の章で、具体的に、上記②③の「損金算入限度額の算定方法」を見ていきます。
4. 損金算入限度額の計算方法
(1) 特定公益増進法人等に対する寄付金
「特定公益増進法人等に対する寄付金」の損金算入限度額の計算方法は以下となります。
(特別損金算入限度額といいます)
● 特別損金算入限度額=(資本基準+所得基準) × 1/2
(※1) 資本基準
(期末資本金の額+期末資本準備金の額)×当期の月数/12×0.375%(令和4年改正)
(※2) 所得基準額
当期の所得金額(別表4仮計の金額+支出寄付金の額)×6.25%
● 資本基準は、令和4年4月1日以降、期末資本金+期末準備金の合計の額で計算する改正が行われています。
● 「支出寄付金の額」は「一般寄付金」に限らず、「指定寄付金」や、「特定公益増進法人等に対する寄付金」も含まれますので、注意しましょう (以下同様です)。
● また、「特別」損金算入限度額という点にも注意です。下記(3)の「一般の寄付金」とは「別枠」で、「特別に認められた損金算入限度額」となります。
⇒特定公益増進法人等に対する寄付金(公益法人等が支出したものを除く)のうち、「特別損金算入限度額」を超える部分の金額は、「一般の寄附金」に係る損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入されます。
(2) 一般の寄付金
「一般の寄付金」の損金算入限度額の計算方法は以下となります。
● 損金算入限度額=(資本基準+所得基準)×1/4
(※1) 資本基準
(期末資本金の額+期末資本準備金の額)×当期の月数/12×0.25%(令和4年改正)
(※2) 所得基準額
当期の所得金額(別表4仮計の金額+支出寄付金の額)×2.5%
5. 注意事項
(1) 経済的利益の供与・低廉譲渡
「寄付をした」という認識がなくても、税務上「寄付金認定」されるケースがあります。「一般の寄付金」に例示される「経済的利益の供与・低廉譲渡」と言われる取引です。
例えば、財産や物を無償で贈与したり、無利息貸付を行った場合などは、法人税上、「経済的利益の供与」とみなされ、「時価相当額」や「利息部分」が寄附金となります。関係会社に対する債権放棄も、要件を満たさない限り「寄付金認定」されます。寄付金認定されると、課税関係が生じますので注意しましょう。
(2) 実際支出した寄付金のみ
寄付金が損金になるためには、実際に支出が必要となります。未払寄付金は損金として認められない点に注意しましょう。
(3) 消費税の取扱い
無償の贈答の場合は、対価性がありませんので、消費税は「不課税」となります。
ただし、単純に「名目」が「寄付金」という点だけでは判断せず、「対価性」の有無による個別判断が必要です。
6. 具体例
● 指定寄付金 1,000千円(会計上 費用計上)
● 一般の寄付金支出額 2,000千円(会計上 費用計上)
● 別表4「仮計」の金額 8,600千円
● 期末資本金+期末資本準備金の額合計 100,000千円
(1) 支出寄付金合計(指定寄付金+一般の寄付金)
1,000千円(指定)+2,000千円(一般)=3,000千円
(2) 損金算入限度額(一般寄付金のみ)
① 資本基準額
100,000千円×12/12×0.25%=250千円
② 所得基準額
(8,600千円+1,000千円+2,000千円)×2.5%=290千円
③ 限度額
(250千円+290千円)×1/4=135千円(損金算入限度額)
(3) 損金不算入額
3,000千円-1,000千円(指定寄付金)-135千円(一般の寄付金限度額)=1,865千円
(4) 別表4 所得の金額の計算に関する明細書の記載
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
留保 | 社外流出 | |||
当期利益 | ・・・ | |||
加算 | ・・・ | ・・・ | ||
減算 | ・・・ | ・・・ | ||
仮計 | 8,600,000 | |||
寄付金の損金不算入額(※) | 1,865,000 | 1,865,000 |
(※)実際は、別表8から転記されます。
7. ご参考~企業版ふるさと納税~
法人にも「ふるさと納税」が認められています。正式名称は、「地方創生応援税制」、企業が自治体に寄付をすると税負担が軽減される制度です。
2020年4月に大幅改正され、最大、寄付金額の約90%の税負担軽減が可能になりました。
ただし、青色申告の要件や、1回あたりの寄付額が10万以上など、様々な制限がある点に留意が必要です。
8.参照URL
● (交際費と寄付金の区分)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5262.htm
● (財務省 指定寄付金 一覧)
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/559555_60572369_misc.pdf
● (財務省 特定公益増進法人に対する寄付金)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/tokutei_koueki/index.htm
● (特定公益増進法人に対する寄付金)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5283.htm
● (認定NPO法人に対する寄付金)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5284.htm
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