税金の豆知識
Q162 商標権の取得価額の範囲・会計処理/耐用年数や消費税の取扱いは?
最終更新日:2022/02/0359967view
「商標」・・は、どんなものかというと、イメージは「商品名」や「サービス名」のことです。
例えば、「ポケモン」「アンパンマン」などのキャラクター、会社のロゴなども、すべて「商標」になります。
こういった「商標」。勝手に他人に使われたら困りますよね?
例えば、「ポケモン」を考えた会社が商売をしている中で、勝手に他人にその名前を利用されてしまうと・・?
ビジネスが阻害されてしまう可能性がありますね。
そこで、「商標登録」を行うことで、「他人が勝手に利用できない権利」を取得します。
これが「商標権」です。
今回は、この「商標権」の会計処理につき解説します。
目次
1. 商標権とは?
(1) 商標権とは?(商標法)
特許庁に商標登録の出願・審査を経て、登録可能と判断された場合に、登録料を納付します。
この時点で、「商標登録原簿」に登録され、初めて「商標権」が発生することになります。
商標として保護されるのは、「文字・図形・記号」の他、「立体的形状」や「音」等も含まれます。
権利の存続期間は10年ですが、申請により「存続期間」をさらに10年更新延長することも可能です。
(2) 特許権・実用新案権との違い
「商標権」は、存続期間を更新できるところが、他のよく似た権利との大きな違いです。
存続期間 | 更新 | |
---|---|---|
商標権 | 10年 | 申請により可 |
特許権 | 20年 | 不可 |
実用新案権 | 10年 | 不可 |
2. 商標権の会計処理
(1) 原則 資産計上 10年償却
商標権は、会計上、原則として「無形固定資産」に計上し、耐用年数10年で償却します。
償却開始時期は、「商標権登録日」、「定額法」での償却となります。
権利の存続期間が10年ですので、「償却期間」はわかりやすいですね。
(2) 例外 少額減価償却資産で損金処理
他の固定資産と同様、単価が少額の場合は、少額減価償却資産の特例の取扱いが可能です。
10万未満 | 「少額減価償却資産の規定」により損金経理 |
---|---|
10万以上20万未満 | 「中小企業の特例規定」か「一括償却資産」を選択適用 |
20万以上30万未満 | 「中小企業の特例規定」により損金経理 |
(3) 消費税の取り扱い
国内での商標権取得は「課税取引」に該当し、仕入税額控除の対象となります。
(海外登録の「商標権」の支払は、「消費税課税対象外」)。
同一の商標権を、自国と日本国内に登録している場合もあるので、注意しましょう。
(4) 商標権として登録申請しない場合
商標権として登録申請しない場合の支出額は、「開発費」として償却を行うことになると思われます。
なお、「開発費」は、税務上は「任意償却」となりますので、支出年度に一括費用処理もできますし、5年内の均等償却も可能です。
3. 商標権の取得価額の範囲
会計処理で一番迷うのは、支払った金額のうち、「商標権」として「無形固定資産」に計上する範囲がどこまでか?
・・という論点です。
出願から登録に至るまでには、さまざまな支出があります。
これらすべての支出が資産として「商標権」に計上するわけではありません。損金に計上できるものもあります。
取得時に「損金」にできるものは、早めに処理したほうが節税につながりますね。
(1) 資産に計上するもの
原則として、「無形固定資産」として計上する対象は、①購入対価と②付随費用になります。
付随費用のイメージは、事業利用や購入のために直接要した費用です。
例えば、商標そのものを作成するために依頼した「デザイン料」や、「商標調査費用」などは、ここに含まれます。
(2) 損金に計上できるもの
無形固定資産の取得価額に含めなくてよいものとして、
「登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」が定められています(法基通7-3-3の2)。
例えば、「印紙代」や「登録のための弁理士手数料」などが該当します。
4. 支出内容ごとの会計処理
時系列ごと、支出内容ごとに会計処理をまとめると、以下となります。
時期 | 内容 | 科目 |
---|---|---|
出願前 | ロゴなどデザイン料(デザイナー等) | 商標権(課税) |
商標調査費用・調査手数料(弁理士) | 商標権(課税) | |
出願時 | 商標出願印紙代(特許庁) | 租税公課(不課税) |
出願手数料・電子化手数料・拒絶時の手数料(弁理士) | 支払手数料(課税) | |
登録時 | 商標登録印紙代(特許庁) | 租税公課(不課税) |
登録手数料、成功報酬(弁理士) | 支払手数料(課税) | |
更新時 | 更新するために直接要した費用 | 商標権(課税) |
更新登録印紙代 | 租税公課(不課税) | |
更新登録手数料(弁理士) | 支払手数料(課税) |
更新は、使用可能期間の延長となり、「資本的支出」となります。
5. 商標権の使用権(ロイヤリティ)の場合は?
商標権を保有する法人等に「この商標を利用してもよいですよ」と許諾され、その使用料を支払うことがあります
(ロイヤリティやライセンス料とも呼ばれます)。
例えば、親会社が保有する「商標権」を子会社が利用する場合、子会社は親会社に一定の「ロイヤリティ」を支払います。
この「使用権」の会計処理はどうなるでしょうか?
(1) 権利金等として一時に支払う場合
「税務上の繰延資産」に該当します。
「役務提供を受けるための権利金等」として、原則5年(5年内更新で、更新時に一時金を払う場合はその更新年数)で償却します。勘定科目は一般的に「長期前払費用」で計上します。
(2) 権利金等での一時金ではなく、毎月支払う場合
支出時に損金で計上します。
勘定科目は「ロイヤリティ」「支払手数料」などが一般的です。
(3) 消費税の取り扱い
国内登録の「商標権使用権」の支払は「消費税課税取引」となります
(4) 源泉徴収
使用許諾を与える方(ライセンサー)が非居住者(外国法人等)の場合、ライセンス料を支払う際には、源泉徴収が必要となります。
6. 会計処理例
商標登録予定のロゴマークに関する「支出額」は以下のとおりです(すべて税抜。年度は12か月とする)
● ロゴマークのデザイン料500千円(デザイナー)
● 商標調査費用100千円(弁理士)
● 出願・登録印紙代60千円(特許庁)
● 弁理士への出願・登録手数料 100千円(弁理士)
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
取得時 | 商標権(課税)(※1) 租税公課(不課税) (※2) 支払手数料(課税)(※3) 仮払消費税 | 600 60 100 70 | 現預金 | 830 |
決算時 | 減価償却費(※4) | 60 | 商標権 | 60 |
(※1)デザイン料500+商標調査費用100 = 600
(※2)出願・登録印紙代(不課税)
(※3)弁理士への出願・登録手数料 100
(※4)商標権取得価額600 ÷ 10年(償却年数) = 60
7. 参照URL
(商標権)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/renketsu/06/06_01_01.htm
(税務上の繰延資産)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_02.htm
8. YouTube
YouTubeで分かる「商標権の取得価額の範囲・会計処理は?」