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Q165 管理組合へのマンション管理費・修繕積立金の会計処理/勘定科目・経費と消費税の疑問を解決

最終更新日:2022/02/03

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Q165 マンション管理費・修繕積立金等の会計処理/税務処理

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

マンションを所有する場合、毎月「管理費」や「修繕積立金」などを管理組合に支払います。
この点、所有マンションを「賃貸」に出す場合、毎月管理組合に支払う「管理費」や「修繕積立金」などは「経費」にできるのか?考えたことはありませんか?

今回は、マンション所有者が支払う「諸費用」の会計処理/税務処理につきまとめます。

 

1. 管理費の税務処理

管理費とは、マンション共用部分の管理等に要する費用で、毎月管理組合に支払うものです。
所有不動産を賃貸した場合、「管理費」は、マンションを賃貸するために毎月必要な経費となりますので、「支払時」に経費計上が可能です。

 

2. 修繕積立金の税務処理

修繕積立金とは、将来行われるマンション共用部分の修繕に備えて、長期間にわたって毎月管理組合に支払うものです。
所有不動産を賃貸した場合、「修繕積立金」も、マンションを賃貸するために必要な経費という点では、「管理費」と共通しています。

しかし・・実際に毎月修繕するわけではなく、あくまで将来の修繕に備えた「積立金」なので・・「支払時」に経費にできるのか・・?少し迷いそうですね。

税法上は、どういう規定になっているのでしょうか?

 

(1) 原則

税法上は、「債務確定主義」という考え方に基づき、実際に修繕が行われるまでは役務提供が完了しないため、「修繕積立金」支払時点での経費計上は認められていません(所得税基本通達37-2)。

 

(2) 例外

しかし、修繕積立金は毎月支払義務があり、管理規約等で「返還しない」と定められているのが一般的です。
実際修繕するまで経費で認めない・・というのも、賃貸オーナーにとっては、酷な感じがしますよね。
そこで、例外的に「適正な管理規約に従い修繕積立金を支払っている」場合は、積立金を支払った時点で経費にできる場合も認められています。

以下の要件を満たす場合、支払時に一括経費計上が認められます。

 

(要件)

管理組合に修繕積立金の支払義務がある。
管理組合が預かった修繕積立金に「返還義務」がない。
将来の修繕等のためのみに利用され、転用されない。
修繕積立金の金額は、長期修繕計画に基づき、合理的な方法により算定されている。

一般的なマンションであればおおむね上記要件を満たしますので、基本的には、修繕積立金も管理費同様「支払時に経費計上できる」ということですね。

 

3. 管理費・修繕積立金にかかる消費税の取扱い

管理費・修繕積立金の支払は「消費税課税対象外」となります。
なぜなら、マンション管理組合が区分所有者(組合員)との間で行う取引は、「営業」に該当しない、つまり「事業の対価」ではないからです。
理屈上は、単なる「会費的」な位置づけととらえ、「消費税課税対象外」となります。

なお、管理費・修繕積立金だけでなく、管理組合からマンション所有者に駐車場を貸し付ける行為も「消費税課税対象外」となります。

 

4. 勘定科目は?

厳密には、管理費は「支払手数料」、修繕積立金は「修繕費」なんでしょうけど・・支払う側からすると、区別する意味が・・さほどないとも考えられます。
個人的には、両者区分せず「支払手数料」などの科目に集約してもよいかと思います。

ただし、消費税課税対象外となるため、科目はともかく「消費税区分」だけは間違えないように。

 

5. 修繕積立基金・管理準備金は?

毎月の「管理費」「修繕積立金」に似たものとして、マンション購入時に支払う「修繕積立基金」「管理準備金」があります。これらの会計処理はどうでしょうか?

 

(1) 修繕積立基金の税務処理

毎月の「修繕積立金」の負担を減らすことを目的として、新築マンション購入時に、管理組合に一括で支払うものです。
実質的な内容は、毎月の「修繕積立金」の前払的な位置づけになります。
税法上の規定は特にありませんが、実質内容は「修繕積立金」の前払ですので、以下の解釈になるかと思います。

 

原則実際、修繕が行われた年度に経費処理
例外修繕積立金の経費処理「例外要件」を満たす場合は、長期修繕計画の期間に応じて経費処理
⇒毎月支払う「修繕積立金」と異なり、「将来の修繕費」を「一時払」する内容となるため、何らかの期間配分が必要になります。
(長期前払費用⇒期間に応じて費用処理)

(公益財団法人 「全日本不動産協会」のサイトでも見解が触れられています)
消費税区分は「課税対象外」となります。

 

(2) 管理準備金の会計処理

管理準備金とは、新築マンション入居時に支払う「管理費」の一時金です。新築マンションの場合、最初に管理組合でかかる費用が多いため(備品や保険代など)、それに対応して「入居時に一括」で支払うものですね。管理準備金は、入居時に役務提供を受ける対価として支払う内容になりますので、入居時に一括経費処理でよいと思います。
消費税区分は、こちらも「課税対象外」となります。

 

6. その他 アフターケア保証金

新築マンション購入時に、入居後のメンテナンスを保証する名目で、「保証金」を支払う場合があります。
例えば、三菱地所では「レジデンスケア」という名称で、入居後の住まい不具合を保証するサービスがあります。
こういったアフターケア保証金は、税務上の繰延資産(長期前払費用)として償却するものと思われます。

消費税上は、役務提供の対価ですので「課税取引」となります。

 

7. 参照URL

(修繕積立金の取扱い)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/12.htm

(消費税の取扱い)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/26.htm

(全日本不動産協会)
https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%AE%A1%E7%90%86%E7%B5%84%E5%90%88%E3%81%AB%E6%94%AF%E6%89%95%E3%81%86%E4%BF%AE%E7%B9%95%E7%A9%8D%E7%AB%8B%E9%87%91%E7%AD%89%E3%81%AE%E6%89%80/

 

8. YouTube

 

YouTubeで分かる「管理組合へのマンション管理費・修繕積立金の会計処理」
 

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