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Q189【年金受給者】所得控除の種類は? 高齢者に優遇される「所得控除」の内容とは?扶養控除・配偶者控除・障害者控除・医療費控除

最終更新日:2023/11/17

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No189【年金受給者】扶養控除や配偶者控除が可能な条件は?要介護認定は障害者控除? 高齢者を対象に優遇される「所得控除」の内容とは?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

サラリーマン給与と同様、年金を受給する場合も、原則として所得税等が課税されます。
ただし、年金は、収入額「全額」に対して課税されるわけではなく、①公的年金等控除や②各種の所得控除等を差し引いて、「課税所得」が生じる場合のみ課税されます。

「所得控除」とは例えば、扶養控除、配偶者控除、障害者控除等、各人の状況に応じて所得税を安くしてくれる制度です。

今回は、まず、所得税上定められている、これらの「所得控除」の種類をお伝えします。
そのうち、年金受給者に優遇されている扶養控除・配偶者控除等の内容、要介護認定等と障害者控除の関係等を中心にお伝えします。

 

1. 所得控除の種類

公的年金等の課税所得は、下記の式で算定されます。
課税される金額は、収入金額全額ではなく、公的年金等控除や、各種所得控除を差し引いた課税所得に対して課税されます。

公的年金の課税所得= 収入金額 - 公的年金等控除額 - 各種所得控除

公的年金等控除は、年金収入の金額に応じて最初から認められる「経費」のようなものです(公的年金等控除額についてはQ188をご参照ください)。

一方、「所得控除」とは、配偶者控除、医療費控除など、各人の状況に応じて所得税の計算上、収入金額から差し引ける経費のようなものです。所得税上、以下の「所得控除」が定められています。
それぞれの「詳細な制度内容」はリンク先をご参照ください。

種類内容所得税控除額
基礎控除誰でも認められる所得控除最大48万円
扶養控除合計所得48万円以下の扶養親族がいる場合● 通常・・38万円
70歳以上の扶養親族・・48万円(同居老親等は58万円)
● 19歳~23歳扶養親族・・63万円
配偶者控除
配偶者特別控除
● 配偶者の合計所得48万円以下の場合
● 配偶者の合計所得48万円超133万円未満の場合
● 配偶者70歳未満・・最大38万円
配偶者70歳以上・・最大48万円
社会保険料控除・
小規模企業共済掛金等控除
国民健康保険、国民年金、厚生年金、厚生年金基金、小規模企業共済等掛金、個人型・企業型年金加入掛金(iDeCo等)等年間支払金額
生命保険料・地震保険料控除生命保険、介護医療保険、個人年金、地震保険などの損害保険料● 生命保険料控除・・最大12万円
● 地震保険料控除・・最大5万円
医療費控除医療費の支払がある場合● 医療費支出額‐10万円
(総所得金額200万未満は総所得金額等×5%)
● 上限200万円
障害者控除本人やその親族が障害者の認定を受けているとき27万円~75万円
寡婦・ひとり親控除シングルマザーの人や死別・離婚されている人27万円or35万円
寄付金控除ふるさと納税等の寄付がある場合特定寄付金額 - 2,000円
(上限あり)
勤労学生控除本人が勤労学生に該当する場合27万円
雑損控除災害や盗難、横領による損失以下いずれか多い方
● 正味の損失-(総所得金額×10%)(上限あり)
● 正味の災害関連損失-5万円

上記の所得控除は、広く一般的に認められますが、その中でも、年金受給者の場合は、優遇されている「所得控除」が存在します。以下、年金受給者に影響がある「所得控除」を中心に、内容や留意事項をまとめます

 

2. 扶養控除

扶養控除とは「合計所得金額が48万円以下」の扶養親族がいる場合に認められる所得控除です。70歳以上の扶養親族は、一般の扶養控除よりも高い控除額となっています(カッコ書きは住民税の所得控除額を示します、以下同様です)。

種類控除額
老人扶養親族(70歳以上)同居老親等以外48万円(38万円)
同居老親等58万円(45万円)
一般の控除対象扶養親族(16歳以上)38万円(33万円)
特定扶養親族(19歳~23歳未満)63万円(45万円)

● 合計所得金額とは、総合課税所得+分離課税所得の金額(繰越損失控除前)です。誤解を恐れずいうと・・イメージは、公的年金等控除後、所得控除前の金額です。
老人扶養親族とは、70歳以上の扶養親族の方です。同居老親等とそれ以外で控除額が異なりますが、一般の扶養控除よりも高い控除額となっています。
同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者・その配偶者の直系の父母・祖父母などで、納税者・その配偶者と常に同居している人となります。例えば、「夫の親」と「夫」が別居している場合でも、「配偶者である奥様」が「夫の親」と同居していれば「同居老親等」となります(子供が「夫の親」と同居は×)
老人ホームに入居している場合は「同居要件」満たしません。一方、入院については、たとえ長期間入院している場合でも「同居」に該当します。

 

3. 配偶者控除

配偶者控除とは、「合計所得金額が48万円以下」の配偶者がいる場合に認められる所得控除です。70歳以上の配偶者は、一般の配偶者控除よりも高い控除額となっています。
ただし、配偶者控除の金額は、扶養控除と異なり、一律ではありません。本人の合計所得(年金等)に応じて、3種類に分かれます。以下の通りです。

本人の合計所得金額老人控除対象配偶者
控除額
一般の控除対象配偶者
控除額
900万以下48万円(38万円)38万円(33万円)
900万超950万円以下32万円(26万円)26万円(22万円)
950万円超1,000万円以下16万円(13万円)13万円(11万円)

配偶者特別控除については、年齢により「特別に定められた規定」はなく、一般の配偶者特別控除と同じ規定となります。配偶者特別控除については、Q47をご参照ください

 

4. 社会保険料控除

社会保険料控除とは、介護保険、国民健康保険、国民年金等を支払っている場合に認められる所得控除です。「年間支払額の全額」が所得控除可能です。年金受給者の場合、年金受給時に介護保険料等が天引きされているケースがありますので、確定申告の際には、年金受給時に天引きされている社会保険を、忘れずに記載します。

 

5. 医療費控除

医療費控除は、「年間支払医療費」が一定額を超えた場合に認められる所得控除です。

● 納税者と「生計を一」にする配偶者やその他親族の医療費も含まれます。別居していても、仕送り等、日常生活費を負担している場合は「生計を一」となります。
公共交通機関の交通費も、医療費控除の対象となります。

 

6. 障害者控除

納税者本人or納税者本人と生計を一とする「合計所得金額が48万円以下」の配偶者や扶養親族が、所得税法上の障害者に該当する場合に認められる所得控除です。本人だけでなく、生計一の配偶者等、16歳未満の扶養親族が障害者である場合も本人の所得控除が可能な点が特徴です。

 

(1) 障害者控除の対象

年金受給者の方は、比較的「障害者控除」ができる方が多いかもしれません。
障害者控除の対象となる人は、以下となります。

内容特別障害者に該当する場合
精神上の障害精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態にある人常に特別障害者
知的障害者児童相談所や精神保健福祉センター、精神保健指定医等の判定により、知的障害者と判定された人重度の知的障害者は、特別障害者
身体障害者
(身体障害者福祉法)
身体障害者手帳に、身体上の障害で記載がある人障害の程度1級又は2級の人は特別障害者
精神又は身体に障害がある65歳以上の方で
上記①~③に準ずる方
市町村長等の認定を受けている方特別障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人
精神障害者
(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人障害等級1級の人
常に寝たきりで複雑な介護が必要な方12月31日の現況で6ヶ月以上身体障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人(介護を受けなければ自ら排便等をすることができない状態)常に特別障害者
戦傷病者
(戦傷病者特別援護法)
戦傷病者手帳の交付を受けている人恩給法に定める特別項症から第3項症までの人
原子爆弾被爆者
(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律)
厚生労働大臣の認定を受けている人常に特別障害者

● 「複雑な介護を要する方」につき、特に証明するものはありませんが、市町村長から認定書の交付を受けることも可能です(厚生労働省・平成14年8月1日事務連絡)
● なお、「要介護認定」については、介護保険法により認定されるものであり、上記の「障害者控除」には直接関係しません。ただし、上記④「市町村長等の認定」を受ける際に、「介護保険法の要介護認定」が要件となる場合が多いため、実務上は「要介護認定」を受けている方は、市町村長の認定を通じて所得税上の「障害者控除対象者認定」を受けることになります。

 

(2) 控除額

下記の3種類に区分されます。

種類控除額
障害者27万円(26万円)
特別障害者40万円(30万円)
同居特別障害者75万円(53万円)

● 同居特別障害者とは、特別障害者のうち、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている人です。
● 「同居特別障害者」は、「扶養控除」の1つである「同居老親」よりも、同居する親族の範囲が広い点が特徴的です。「生計一の親族」が同居する場合でも認められる点、「同居老親」よりも範囲が広くなっています。ただし、同居老親同様、老人ホーム入居の場合は、同居となりません。

 

7. ひとり親控除・寡婦控除

ひとり親控除・寡婦控除は、納税者が「ひとり親」の場合や、配偶者と死別・離婚している場合に認められる控除です。特に、女性の方で、配偶者と死別した場合は、寡婦控除が適用できる場合がありますので、留意が必要です。

種類控除額
ひとり親控除35万円(30万円)
寡婦控除27万円(26万円)

 

8. 参照URL

(No.1182 お年寄りを扶養している人が受けられる所得税の特例)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1182.htm

(「同居」の範囲(長期間入院している場合))

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/32.htm

(No.1184 扶養家族に寝たきりの老人がいるときの控除額)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1184.htm

(障害者控除)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm

 

9. YouTube

 

YouTubeで分かる「【年金受給者】所得控除の種類は? 高齢者に優遇される「所得控除」の内容とは?」
 

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