税金の豆知識

Q37 固定資産を売却した場合の消費税仕訳/会計処理/税務処理 除却の場合は?

最終更新日:2022/01/26

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Q37固定資産を売却した場合の消費税仕訳/会計処理

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

固定資産を売却した場合の消費税仕訳/会計処理

「固定資産を売却した場合」の会計処理に悩まれる方も多いと思います。
今回は、「消費税」の観点で、固定資産売却の際の会計処理をまとめます。

 

1.消費税は、損得に関係なく「売却額」に課税される

例えば、簿価3,000千円の車を、1,000千円で売却した場合を考えてみましょう。

この場合、損してるんだから、消費税なんてかからないのでは?・・と考える方もおられるかもしれません。
しかし、消費税は「課税資産の譲渡対価」にかかる税金ですので、「損得」関係なく消費税は課税されます。

つまり、消費税は「譲渡」に対して課税されるわけではなく、「譲渡額」に対して課税される税金なんですね。
これに対して、法人税や所得税は、「もうけ」に対して課税されますので、「譲渡損」の場合は税金がかかりません。

ここが「消費税」と「法人税等」の大きな違いになります。

 

2.売却損の場合

(例題)

● 簿価3,000の車を1,000(税込)で売却した。
● 消費税は10%とする(以下の例題も同様)。
●減価償却費は無視する(以下の例題も同様)。

固定資産を売却した場合の消費税仕訳/会計処理

(1)通常の仕訳

消費税を考慮しない場合の仕訳は以下の通りです

借方貸方
現金
固定資産売却損
1,000
2,000
車両3,000

●上記の場合、「消費税」は、売却額1,000に対して課税されます。
 つまり、税込1,000÷1.1×0.1=90の消費税(仮受消費税)を認識する必要があります。
● 一般的な会計ソフトでは、売上等に関しては、仕訳を入力すると自動で消費税(仮受消費税)を認識してくれますが、固定資産売却の場合、上記仕訳を入力しただけでは、消費税は正しく自動認識してくれません。
 

(2)消費税を認識するための考え方

仕訳を考えるにあたって、「売却収入」と「売却原価」を分解するとわかりやすいです。

借方貸方
現金1,000固定資産売却収入(売却益)1,000
→消費税課税対象
借方貸方
固定資産売却原価3,000車両3,000
→消費税対象外

●上記の「売却収入」を会計ソフト上は、課税売上で入力する必要があります。

 

(3)消費税を考慮した実際の仕訳

私が普段お伝えしている仕訳は、以下の通りです(やり方はいろいろあると思います)。

① 一旦売却額を全額「売却益」で入力する
「売却額」全額に消費税を認識するため、売却金額全額を「売却益」(課売)で入力します。

借方貸方
現金1,000固定資産売却益(課売)
仮受消費税
910
90

1,000÷1.1×0.1=90

② 売却簿価を全額「固定資産売却益」のマイナス(不課税)で計上する

現実的な「売却損益」は、「売却額」ではなく「売却簿価差引後」の金額のため、「売却簿価金額」を「売却益」のマイナスで入力します。ただし、消費税はあくまで「売却額」に課税されるため、当該仕訳は「不課税取引」で入力します。

借方貸方
固定資産売却益(不課税)3,000車両3,000

③ 売却益のマイナス(借方)を売却損に振り替える

借方貸方
固定資産売却損(不課税)2,090固定資産売却益(不課税)2,090

●この仕訳は、単純な振替仕訳で「消費税」には全く関係ありませんので「不課税取引」として手入力します。
●「不課税取引」にしておかないと、誤って消費税を自動認識してしまうケースがあるため、注意しましょう。

 

(4)結果

消費税は売却額1,000に対して認識され、正しい売却損2,090が計上されます。

 

3.売却益の場合

では、売却益の場合はどうでしょう?
(例題)

● 簿価3,000の車を5,000(税込)で売却した。

固定資産を売却した場合の消費税仕訳/会計処理

(1)通常の仕訳

消費税を考慮しない場合の仕訳は以下の通りです。

借方貸方
現金5,000車両
固定資産売却益
3,000
2,000

●消費税は、売却額5,000に対して課税されます。
つまり、税込5,000÷1.1×0.1=454の消費税(仮受消費税)を認識する必要があります。
● 一般的な会計ソフトでは、売上等に関しては、仕訳を入力すると自動で消費税(仮受消費税)を認識してくれますが、上記仕訳を入力しただけでは、消費税は正しく自動認識してくれません。
 

(2)消費税を認識するための考え方

基本的には「売却損」の場合と同じ流れで、売却収入と売却原価を分解します。

借方貸方
現金5,000固定資産売却収入(売却益)5,000
借方貸方
固定資産売却原価3,000車両3,000

●上記の「売却収入」を、会計ソフト上は、課税売上で入力する必要があります。
 

(3)消費税を考慮した実際の仕訳

① 一旦売却額を全額「売却益」で計上し、消費税を認識する。

「売却額」全額に消費税を認識するため、売却金額全額を「売却益」(課売)で入力します。

借方貸方
現金5,000車両売却益(課売)
仮受消費税
4,546
454

5,000÷1.1×0.1=454
 

② 売却簿価を全額「固定資産売却益」のマイナス(不課税)で計上する

現実的な「売却損益」は、「売却額」ではなく「売却簿価差引後」の金額のため、「売却簿価金額」を「売却益」のマイナスで入力します。ただし、消費税はあくまで「売却額」に課税されるため、当該仕訳は「不課税取引」で入力します。

借方貸方
固定資産売却益(不課税)3,000車両3,000
(3)結果

消費税は売却額5,000に対して認識され、正しい売却益1,546が計上されます。
 

4.除却の場合

「除却」の場合は、資産の譲渡がありませんので、消費税「不課税取引」となります。
売却の仕訳と比較すると、簡単です。

(例題)

● 簿価3,000の車を廃棄(除却)した。

借方貸方
固定資産除却損(不課税)3,000車両3,000

5.ご参考~期中の減価償却費~

期中に固定資産を売却した場合には、売却時までの月割減価償却費を計上する場合もあると思います。
その場合は、上記仕訳の後、「減価償却費」対応金額を売却益(or損)から振替えます。
この仕訳も、単純な振替取引のため「不課税取引」となります。

 

借方貸方
減価償却費(不課税)XXX固定資産売却益又は損(不課税)XXX

 

6.YouTube

 
YouTubeで分かる「固定資産を売却した場合の消費税仕訳」
 

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