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Q72【短期前払費用】家賃前払いの経費特例/要件や対象となる取引は?契約書への記載は?

最終更新日:2024/10/19

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Q72短期前払費用って何?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

店舗や事務所の家賃などは、翌月分をその「前月まで」に支払うケースが多いですね?
原則的には、翌月以降に「サービス提供」を受けるものを支払った場合は、「前払費用」で計上し、サービス提供時に「経費」に振り替えることになります。

しかし例外的に、「翌月以降の経費を前払」した場合でも、支払った際に経費にできる取引があります。
「短期前払費用」と呼ばれています。法人だけでなく、個人事業主にも認められています。

そこで今回は、税務上の「短期前払費用」の制度概要と、「対象となる取引」につきまとめます。

 

1.原則的な「前払費用」の取扱い

家賃などの支払経費は、原則、支払時の経費にはできず、「サービス提供を受けた月」に経費計上を行います。
また、消費税の課税仕入の時期も、原則として「サービスの提供」があった時となります。
 

(例)3月決算で、3月に翌月4月分の家賃110,000(内消費税10,000)を支払った場合

借方貸方
3月支払時前払費用110,000預金110,000
4月地代家賃
仮払消費税
100,000
10,000
前払費用110,000

 

2.短期前払費用の取扱い

例外的に、「短期前払費用」の要件を満たす場合は、支払時に損金算入が認められます。
また、消費税上も、「短期前払費用」の取扱いにより、支払時に損金経理している場合は、支払時の「課税仕入」にすることが認められます。つまり・・消費税上も、早めに「仕入税額控除」ができるということですね。
 

上記例題の場合、以下の仕訳となります。

借方貸方
3月支払時支払家賃
仮払消費税
100,000
10,000
預金110,000
4月仕訳なし

「短期前払費用」の処理を行うと、支払時に損金計上、消費税の仕入税額控除ができるため、支出年度の税金を軽減できる効果があります。
 

3.短期前払費用が認められる要件

「短期前払費用」の対象となる取引は、限定されています。
以下「すべての要件」を満たす必要があります。

支払日から「1年以内役務の提供を受ける」ものであり、時の経過に応じて費用化されるもの
契約に基づき、同一サービス(等量等質)継続的に受けるもの

継続的に支払時に費用処理(年度ごとに年払・月払変更は×)(※1)
収益計上と対応させる取引でない(※2)
決算までに支払うこと(未払は×)

(※3)

(※1)適用事業年度前後の経理処理がポイントになります。税務調査でも否認事例があるため注意(税務通信No3673 )。
(※2)サブリースの賃借料、預貯金運用利息と対応する借入利息など。
(※3)契約上「年払」の記載要件はありませんが利益調整を目的とした「年払い」は×です。(税務通信 NO3655)

 

4.対象となる取引

(1)継続的な取引が対象

継続的な取引が対象となり、一定時期に「特定のサービス」を受けるための前払取引(単発取引)は含まれません
例えば、翌年開催される展示会費用の前払などは、「継続的な取引」ではありませんので、対象にはなりません。
 

(2)税理士報酬等の顧問料・コンサルティング料は?

税理士や弁護士等の顧問料は、毎月定額払としても、その内容は毎月異なるものであり、「同一サービス(等量等質)を継続的に受ける」要件を満たしませんので、対象にはなりません。
サービス内容が毎月一定でない顧問料や、毎月金額が変わるコンサル料などは、「短期前払費用」の要件を満たしません。
(弁護士に支払う「損害賠償請求訴訟」の着手金は、勝敗に関わらず支払われる内容のため、支出時損金OK)
 

(3)リース料は?

所有権移転外FLについては、賃貸借処理が認められますが、あくまで賃貸借処理は「賃借料」を減価償却費とみなして損金算入を認める取扱いであり、賃借料そのものではありません。したがって、賃貸借処理をしている所有権移転外FLのリース料については、「短期前払費用」の対象にはなりません
 

(4)具体例

対象となる取引、対象とならない取引をまとめると、以下の通りです。

対象となる取引対象とならない取引
●家賃
●保険料
●保証料、手形割引料
●保守料
●駐車場代
●リース料(オペレーティングリース)
●ロイヤリティ(繰延資産以外)
●給料・役員報酬
●顧問料
●仕入前払代金
●特定時期の広告宣伝費、展示会出展料等
●リース料(ファイナンスリース)
●サブリースの賃借料、預金運用と対応する借入金利息
●繰延資産に該当するもの(ノウハウの頭金等)

5.支払日より1年以内とは?

(1) 原則

支払日から「1年以内に役務の提供を受けるもの」の要件を具体的にあてまめると、以下のとおりとなります。

支払時期サービス提供期間要件満たすか?
①3月末支払翌月4月~翌年3月家賃〇(支払から1年内のサービス提供のため)
②2月末支払翌月4月~翌年3月家賃×(支払日から1年を超えているため)

上記②の場合、超えた1か月分だけが否認されるわけではなく、全額が否認されます。
 

(2) 日割分は?期末に支払う必要あるか?

では、例えば、以下の場合どうでしょうか?

支払時期サービス提供期間要件満たすか?
2021年3月10日支払2021年4月~2022年3月家賃??

上記要件をあてはめると、2022年3月11日~同3月31日の「21日分」は、支払日より「1年を超えた部分」となります。
この場合・・否認されることになるのでしょうか?
もし否認されるとなれば・・毎年「期末日」に振り込まないといけないということになります。

(実務上の取扱い)

実務上は、1か月以内の日割部分の乖離は「柔軟な取扱い」がされ、短期前払費用の取扱いが認められるようです。
そもそも、短期前払費用の規定は、重要性の乏しい取引につき「例外的な扱い」が認められるものであり、規定上も「1日単位での短期前払費用の取扱い」までは言及していないのが理由なようです。

まあ、実務上や、既定の趣旨を考えると、妥当な結論ですね。
したがって、「必ず期末日に振り込まなければいけない!」という結論にはならないと考えてよさそうです!
 

6.ご参考~自賠責保険料は?

自動車等の「自賠責保険料」は、3年分を一括して支払うため、1年以内の条件満たしません。
しかしながら、「課税庁側の運用」として、継続適用を要件に、支払時の一括経費とすることが認められているようです。

自賠責は「加入が義務付けられ、加入しなければ車検が通らない点で車検費用の一部とも考えることできる」点、が理由としてあげられています(財団法人大蔵財務協会「法人税質疑応答集」H12年版)。

 

7.参照URL

(短期前払費用として損金が算入できる場合 法人税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5380.htm

(消費税 課税仕入れの時期11-3-8)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/03.htm

 

8.YouTube

 
YouTubeで分かる「家賃前払いの経費特例」
 

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