税金の豆知識
Q74【建設仮勘定とは?】消費税仕入税額控除の時期・仕訳や減価償却・償却資産税の取扱い
最終更新日:2022/01/3160510view
規模の大きな工事等の場合は、工事期間が長期にわたるため、完成前に「代金の一部」を支払うことがあります。
こういった、工事が完成するまでの支出は、「建設仮勘定」という科目で会計処理を行います。
また、製作途中のソフトウェアにかかる費用は「ソフトウェア仮勘定」で処理を行います。
今回は、建設仮勘定等にかかる消費税の取扱い、仕訳、減価償却の有無等につき解説します。
目次
1.建設仮勘定の会計処理
(1)建設仮勘定とは?
建設仮勘定は、建設中の工事等にかかった支出を一時的にプールしておく科目です。建設が終わり、引き渡しを受けたときに、固定資産本体への振替処理を行います。
なお、いったん支出額をすべて「建設仮勘定」に計上し、その後に「修繕費」部分を経費に振り替える処理も、実務上はよく行われます。
(2)建設仮勘定の仕訳
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
建設工事の手付金として10,000支払 | 建設仮勘定 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
工事完了引き渡しを受け、残金40,000を支払 | 建物 | 50,000 | 建設仮勘定 現金 | 10,000 40,000 |
(3)減価償却は?
固定資産については、利用に伴い価値が減少することから、毎年減価償却を通じて「一定年数」で費用処理を行います。
ただし、建設仮勘定は、あくまで完成前で「事業の用に供していない」状態です。
したがって、「建設仮勘定」の状況では、減価償却は行いません。
あくまで、減価償却は、完成引渡時点で本勘定(固定資産本体)に振り替えた後に実施します。
2,消費税仕入税額控除の時期は?
(1) 消費税の原則
消費税納税額の計算は、原則として、売上等で預かった消費税から、仕入等で支払った消費税を差し引いて計算します(仕入税額控除)
しかしながら、前払費用や前渡金等については、支払時点では、まだ目的物の引渡や役務提供等が完了していないため、「仕入税額控除」はできません。
(2) 建設仮勘定の消費税は?
では・・「建設仮勘定」として支払った金額の「消費税仕入税額控除」の時期はいつになるでしょうか?
建設仮勘定は、工事が完成していない状況で、「前払費用的」な内容が含まれています。
基本的には、上記の消費税の考え方に基づき、「物の引渡しや役務の提供が完了した時点」で「仕入税額控除可能」ということになります。
したがって、単に中間金や着手金を支払った時点では「仕入税額控除」はできませんので注意しましょう。
内容 | 仕入税額控除の時期 |
---|---|
単純な工事前渡代金 | 目的物完成引き渡し日 |
設計料、資材購入費等 | 課税仕入れを行った日 |
(3) 例外
実務上、資材購入費等を、「つど仕入税額控除」することが煩雑であることを背景に、「目的物すべての引渡しを受けた日」の属する課税期間における課税仕入も認められています。
(4)分割検収・部分検収の場合は?
納期が長い場合は、すべての完成を待たずに、部分検収、分割検収を行う場合があります。完成品のうち、一部のみ検収を行い、請求、支払するというものです。
この場合も、分割検収部分につき「役務の提供=目的物の引渡しがあるかどうか?」という観点で消費税仕入税額控除の時期は決まります。単なる中間金支払の「部分検収」の場合は仕入税額控除は認められません。
分割検収部分の「目的物の引渡」があり、金額を合理的に算出可能 | (請求書等で明確なもの)は、その金額に対応する「仕入税額控除」を行う |
---|---|
上記以外の場合(単なる中間金の前払) | 部分検収時点で仕入税税額控除は不可。目的物引渡時点で仕入税額控除OK |
3. 建設仮勘定の消費税仕訳
●契約時に22,000千円(税込)を前払。うち、当期に11,000千円(税込)が部分的に完成し、引き渡しを受けた。
●上記の部分的な完成部分や引渡金額は、合理的に算出することができるものとする。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
建設仮勘定(不課税) 建設仮勘定(課税) 仮払消費税 | 22,000千円 10,000千円 1,000千円 | 普通預金 建設仮勘定(不課税) | 22,000千円 11,000千円 |
●建設仮勘定は、一般的な会計ソフトでは、「不課税」で設定されているケースが多いと思います。
部分検収等で要件を満たす「建設仮勘定」につき、消費税「仕入税額控除」を行う場合は、マニュアルで消費税を入力しないといけない点に注意しましょう。
4.償却資産税は?
建設仮勘定は「事業の用に供していない」ため、減価償却が開始されていません。
したがって、償却資産税の課税対象外となります。
ただし、「建設仮勘定」で計上されていても、実態として「事業の用に供されている」場合は、課税される旨の取扱通知があります。実務上は、「建設仮勘定」は、「仮勘定」で中身がよくわからないケースも多いため、最終的には実態判断ということですね。
なお、土地建物に課税される「固定資産税」は、市役所の「固定資産課税台帳」に登録された時点で課税されます。土地建物については、建物完成時点で「不動産登記」が行われ、その後に「固定資産課税台帳」に登録が行われます。
したがって、建物等完成前の「建設仮勘定」の状態で固定資産税が課税されることは一般的にはありません。
5.参照URL
(建設仮勘定の仕入税額控除の時期)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6483.htm
(前受金や前払金などがあるとき)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6165.htm