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Q82【収益認識基準改正】工事完成基準・工事進行基準の法人税・消費税上の取扱い/部分完成基準とは?出来高請求との違いは?

最終更新日:2024/05/10

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Q82 工事完成基準・工事進行基準って?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

建設業等での「請負工事」に関しては、収益計上基準として2つが認められています。
工事完成時に一括で収益を計上する「工事完成基準」、工事完成を待たず、進捗率に応じて収益を計上する「工事進行基準」です。税法上は、一定規模・期間を要する工事(長期大規模工事)につき、工事進行基準が強制されています。
今回は、法人税上の請負工事等にかかる「収益の計上基準」につき解説します。

なお、2021年4月以後開始する事業年度から、上場会社等においては、「新収益認識基準」が適用され、「工事進行基準」は廃止されています。ただし、実質的な処理自体は、「新収益認識基準」で引き継がれており、法人税上は、依然「工事進行基準」という文言が利用されているため、「工事進行基準」という名称で説明を進めます。
 

1. 工事完成基準と工事進行基準のイメージ

工事完成時に一括で収益を計上するのが「工事完成基準」、工事完成を待たず、進捗率に応じて決算で段階的に収益を計上するのが「工事進行基準」です。
なお、当該基準の対象は、建設業に限らず、造船、大型機械装置の製造や受注制作のソフトウェアなど、「物の引き渡しを目的」とする請負契約全般が対象となります。
具体例で解説します。
 

● 第1期に、請負金額10,000の工事を受注。翌年の第2期中に完成予定となっている。
● 上記の請負工事にかかる見積総原価は5,000とする(内訳 第1期1,000、第2期4,000)
● 実際発生原価は、上記の見積総原価5,000と同じ金額だったものとする(内訳 第1期1,000、第2期4,000)
● 消費税は無視する。

 

(1)工事完成基準

工事完成基準の場合、工事完成までは、発生原価を繰越し(=仕掛品)、完成時点で売上と原価を計上します。したがって、第1期は売上・原価ともにゼロ、第2期に売上、原価がまとめて計上されます。

第1期第2期
売上010,000
原価05,000
(2) 工事進行基準

工事進行基準の場合、工事完成をまたず、決算日における工事進捗状況に応じて、毎年売上と原価を計上します。

第1期第2期1期2期合計
売上(※1)2,000(※2)8,00010,000
原価(※3)1,000(※3)4,0005,000

(※1)
10,000(請負金額) × 1,000(第1期原価)/ 5,000(見積総原価) = 2,000

(※2)
10,000(請負金額) - 2,000 (第1期売上) = 8,000

(※3) 実際発生原価

 

2. 法人税上の取扱い

(1) 工事の規模に応じて決められている

法人税上は、長期大規模工事とその他の工事に区分し、それぞれの適用関係が定められています。

区分法人税上の取扱い
長期大規模工事工事進行基準の強制適用
上記以外の工事工事完成基準・工事進行基準のどちらか選択可能
(2)長期大規模工事とは?(法64①、法令129)

以下のすべての要件を満たす工事です。

工事着手日から、契約上の目的物引渡期日までが1年以上(法法64条1項)
請負対価が10億円以上(法施令129条1項)
請負対価の2分の1以上が工事の目的物引渡日から1年内に支払われることが定められている(法施令129条2項)

 

(3)長期大規模工事以外の工事

長期大規模工事以外の工事の場合、「工事完成基準」「工事進行基準」の選択が可能ですが、「工事進行基準」を適用する場合は、以下の要件を満たす必要があります(法64条②)。

着工事業年度中に、その目的物の引渡しが行われない工事
確定決算において、「工事進行基凖の方法」により経理を行う
いったん工事進行基準を選択した工事は、目的物引渡し事業年度まで毎期継続して適用

実務上は、工事の進捗率が把握できないなどの理由から、「工事完成基準」で会計処理を行ってる場合が多いと思われます。
 

3. 消費税上の取扱い

(1) 課税売上・課税仕入の認識時期

消費税は、原則として、「目的物引渡・役務提供」時点で課税売上、課税仕入を認識しますが、例外的に、法人税上の売上、原価の計上と合わせたタイミングで課税売上・課税仕入を認識することも認められています(消17)

課税売上の認識時期原則請負工事等の「目的物引渡日」
例外工事進行基準の収益額は「収益計上時」でもOK
課税仕入の認識時期原則各資産の「引渡日」や外注先の「役務提供完了日」
例外工事完成基準の場合、請負工事の「目的物引渡日」でもOK(未成工事支出金処理)
(2) 売上・原価の計上と合わせたタイミングで消費税を認識する場合
工事完成基準の場合工事完成基準の場合、完成時まで売上・原価を計上しないため、完成前に発生した原価は「未成工事支出金(仕掛品)」で繰り越します。
当該仕掛品の金額は、税込額で繰り越し、仕掛時点では仮払消費税の計上は行いません
完成時に、売上・売上原価を計上する時点で、仮受消費税・仮払消費税を認識します。
工事進行基準の場合工事進行基準の場合、工事進捗に応じて年度ごとに売上・売上原価を計上します。
したがって、年度ごとの売上、売上原価の金額に応じて仮払・仮受消費税を認識します。
(3) 消費税の納税を先送りしたい場合

上記の(2)、売上・原価の計上と合わせたタイミングでの消費税の認識は、必須の処理ではありません。
「目的物の引渡しが完了」している場合は、原則通り、仕入時点で「仮払消費税」を認識し、完成時点で「仮受消費税」を認識する選択肢も可能です。
 

4. 部分完成基準とは?出来高請求との違い

部分完成基準とは、全部は完成していないが、一部引き渡している場合は、引き渡し部分につき収益の計上が強制されるものです(工事進行基準の適用工事を除く)(法基通2-1-1の4)。

部分完成基準はあくまで、工事完成基準の「完成引き渡し」の単位を明確に定めているだけであり、たとえ一部であっても、「引き渡しが完了」している点で、「工事完成基準」そのものとなります。引き渡しが行われる前に収入計上する「工事進行基準」とは全く異なります。

 

(1) 部分完成基準が強制される場合

以下の場合は、部分完成基準が強制されます。契約が1つ、あるいは1つの工事であっても部分完成基準は適用されます。

内容具体例
1つの契約で、同種の建設工事等を多量に請け負った場合で、「引渡量に従い工事代金を収入する」旨の、特約や慣習がある場合100戸の建売住宅の建設で、1戸を引き渡す都度、工事代金を請求する場合
1つの建設工事等であっても、その一部が完成し、完成部分引渡の都度、その「割合に応じて工事代金を収入する」旨の、特約や慣習がある場合10キロのトンネル工事で、1キロ完成時点で都度引き渡しをし、工事代金を請求する場合
(2) 出来高請求との違い

実務上は、毎月「出来高」で請求する工事案件もあります。
しかし、この「出来高請求」と、「部分完成基準」とは全く異なります。
 
「出来高請求」は、単純に工事ができたところまでお金の請求をするだけのもので、その時点で「完成引渡」があるわけではありません。

出来高請求時点での「入金額」は、売上ではなく「前受金」となります。
 

中小零細企業では、出来高請求に応じて売上計上する実務も見られますが、本来は正しい会計処理ではありません。
 

5. 参照URL

(法人税)~請負による収益・部分完成基準~

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2108.htm

(消費税 延払基準・工事進行基準を用いているとき ・未成工事支出金)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6161.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6487.htm
 

(部分完成基準)

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180530/pdf/%EF%BC%A5.pdf

 

6. YouTube

 

YouTubeで分かる「事業年度が1年未満の場合」
 

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