税金の豆知識
Q126【消費税課税期間短縮とは?】メリットデメリット/届け出時期に注意/簡易課税や免税事業者は?
最終更新日:2022/02/0371536view
消費税の課税期間は、原則として「事業年度単位」(=1年間)となりますが、例外的に、税務署に「事前届出」をすることで消費税の「課税期間」を短縮することができます。
なぜ、わざわざ「短縮」する必要があるのか・・というと・・
消費税は「納付」の場合だけではなく・・「還付」のケースもあるからです。
例えば輸出や、設備投資が多いビジネスの場合は、消費税が「還付」されるケースがあります。
課税期間を短縮することで、消費税を通常より早いタイミングで還付してもらうことができます。
この制度は、法人だけでなく、個人事業主にも認められています。
目次
1. 課税期間短縮のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
● 消費税の還付を早く受けることができるので、資金繰りが楽になる(※1) ● 各種消費税届出書提出漏れの影響を最小限に抑えることができる場合がある(※2) | ● 消費税申告書の提出回数が増えるため、事務処理は煩雑。一般的には税理士報酬も増加する。 ● 一旦、課税期間を短縮した場合は、最低2年間は継続適用が義務付けられる。 |
(※1)特に、輸出や貿易事業者は輸出売上(免税)のため、恒常的に還付が発生します。課税期間を短縮することにより、消費税還付のタイミングが早まるため、資金繰りがかなり改善します。
(※2)例えば「消費税課税事業者選択届出書」の提出を失念していた免税事業者が、多額の設備投資があって、その年度から還付を受けたい場合などです。「消費税課税事業者選択届」と「課税期間短縮届」をセットで提出することにより、提出失念の影響を最小限に食い止めることができる場合があります。(設立初年度は、決算日末までに「課税事業者選択届出書」を提出すれば、第1期から課税事業者になれます)。
2. 課税期間の短縮の種類と届け出時期
(1) 課税期間短縮の種類
納税者の選択により、3か月or1か月ごとの期間に変更することができます。
これ以外の期間は、認められていません。
(2) 届出書の提出時期
原則的に、適用を受けようとする課税期間前日までに、「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を、納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。提出後は、最低2年間は「課税期間の短縮」での期間が強制されます。
●期の途中でも提出は可能です。その場合、最初の期間は、事業年度開始の日から適用開始の日の前日までを「一つの課税期間」として確定申告を行います。
●例外的に、以下の場合は、提出した日の期間から適用できます。
事業開始等 | 事業者が、事業を開始した日の属する期間 (例) 開業1年目、設立第1期など |
---|---|
相 続 | 相続により「課税期間の特例の選択をしていた被相続人の事業」を承継した場合の、その相続があった日の属する期間(消基通 3-3-2) |
合併等 | 吸収合併等により「課税期間の特例の選択をしていた被合併法人の事業」を承継した場合の、その吸収合併があった日の属する期間(消基通 3-3-2) |
(3) 申告期限
課税期間を短縮した場合の申告・納期限については、通常の消費税申告書と変わることはありません。原則として課税期間終了後2か月以内となります。
例えば、3月決算法人の場合を前提に、課税期間を「3か月」に短縮した場合の「課税期間」と「納期限」は以下の通りとなります。
課税期間 | 申告・納期限 |
---|---|
4月~6月末 | 8月末 |
7月~9月末 | 11月末 |
10月~12月末 | 2月末 |
1月~3月末 | 5月末 |
●申告期限を「1カ月」に短縮した場合は、課税期間は「毎月」となりますが、申告時期・納期限については例外があります。
●なお、令和2年度改正により、一定の法人の場合、届出を前提に、期末(第4Q)の消費税申告書については申告期限の1ヶ月延長が可能となります。2021年(令和3年)3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用されます。
3. 課税期間短縮の具体例 (3月決算法人の場合)
年に1回しか届出できないわけではなく、期の途中でも提出・適用が可能です。
以下、具体例を記載します。
(具体例)
● 3月決算会社
● 令和3年8月20日に、「課税期間特例選択変更届」を提出する場合
(1) 課税期間を3か月に短縮するケース
8月20日に提出した場合は、10月1日から「課税期間の短縮」が可能です。課税期間が3か月に変更された場合、提出日が属する課税期間(7月1日~9月30日)の翌日=10月1日となります。つまり、いつ提出しても、「事業年度を3か月ごとに区切った月の翌月初日から短縮期間は適用できる」ということですね。
(2) 1か月ごとの期間に短縮する場合
考え方は、3か月短縮の場合と同様です。8月20日に提出した場合は、翌月9月1日から課税期間の短縮が可能ということですね。
4.原則の課税期間に戻したい場合(課税期間短縮をやめたい場合)
消費税課税期間の短縮の適用をやめたい場合は、「消費税課税期間特例選択不適用届出書」を提出する必要があります。
この場合、(1)提出可能となる時期(2)不適用届出書の効力発生時期&提出後の課税期間に注意する必要があります。
(具体例)
● 3月決算会社
● 令和3年8月20日に、3か月「課税期間特例選択変更届」提出済
(=令和3年10月1日から、3か月の課税期間の適用開始となる)
● 令和5年7月3日に「課税期間特例適用不適用届」を提出
● この場合の、適用関係をまとめると以下の通り
(1) 不適用届出書「提出可能」時期及び効力発生時期
2年縛りがあるため、提出可能時期は以下となります。
令和5年7月3日に提出した場合は、令和5年10月1日から「不適用届出書」の効力が発生します(=「課税期間の短縮」の効力がなくなる)。
(2) 届出書提出後の課税期間(原則課税にもどった後、最初の課税期間)
届出書提出の効力発生日~事業年度末日までの期間が「一の課税期間」とみなされます。上記例だと、令和5年10月1日から効力が生じます、3月決算だと令和5年10月1日~令和6年3月31日までの6か月間が1の課税期間とみなされます。令和6年4月1日以降は、通常の「1年単位」の課税期間に戻ります。
5. 簡易課税や免税事業者の場合
簡易課税の場合は、免税事業者の場合は、消費税が還付されることはありませんので、「消費税課税期間短縮」の論点はでてきません。あくまで課税事業者かつ原則課税の場合の論点となります。還付を受けたい場合は、「課税事業者を選択」する必要があります。
6. 参照URL
(課税期間)
(相続・合併の場合)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/03/03.htm
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