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Q137 【判例で否認も?】フリーレントの借主側(テナント)の税務処理は?中途解約不能・違約金がある場合の取扱い

最終更新日:2023/11/17

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Q137 フリーレントの「借主側」の会計処理と消費税の関係

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

最近は、事務所等を借りる際、「最初の〇か月間家賃無料!」という場合も多いと思います。
一般的に「フリーレント」と呼ばれています。

借主側にとっては、初期費用が抑えられますし、大家さんの立場でも、既存テナントとの関係で、家賃相場を引き下げずに値引対応できる点で、広く活用されています。

この点、「フリーレントの期間」は借主側はお金を支払わないため、会計処理は不要になるのでしょうか・・寄付金で計上するのか・・
フリーレントの期間も、実際役務の提供は受けているため、賃料部分を「未払計上」する考え方もあり、疑問が生じます。

今回は、「フリーレント」の税務処理を、テナント側(借主側)の立場で解説します。

 

1. フリーレントは違約金あり

一般的にフリーレントの場合、フリーレント期間後の「解約」につき、違約金等を設定されている場合が一般的です。
契約期間中に解約した場合は、フリーレント期間の通常賃料と、解約後の未経過期間に係る賃料を違約金として支払うような契約です。
 

(具体例)
● 毎月の通常家賃10万円。
● 賃貸借期間1年間(うちフリーレント期間3か月)
● 賃貸借期間中に賃借人都合で解約した場合、フリーレント期間及び解約後の未経過期間賃料を賃貸人に支払う。

 

⇒上記例題の場合、例えば、フリーレント期間終了後、すぐに解約した場合は、10万円×12か月分=120万円を違約金として支払います。

つまり実質、中途解約した場合には「違約金」が発生するため、たとえフリーレント期間においても、「支払義務は確定」しているとも言えます。
 

2. 会計処理は2つ

税法上、フリーレントの処理に関して、「借主側」の規定は、特にありません。

実務上は、以下の2つの会計処理が考えられます。

 

フリーレント期間の仕訳はなし
(仕訳なし)
実際のお金の支払に合わせて仕訳を行い、消費税も、支払に合わせて「課税仕入」を計上します。
フリーレント期間は「仕訳なし」、実際支払時に支払額で会計処理を行います。中小企業では、圧倒的にこっちが多いですね。
賃料等総額を契約期間で按分&毎月賃料計上
(期間按分)
実際のお金の支払にかかわらず、「賃料等総額を契約期間で按分した月額負担額」を、毎月費用計上し、消費税も、毎月の費用計上に合わせて「課税仕入」を計上します。
フリーレント期間でも、「現実的に事務所は利用している」ので、会計の発生主義の考え方と整合しています。上場会社は、こちらで処理することが一般的です。
ただし、このやり方は、「中途解約不能で、賃料総額が確定」している場合のみ選択可能です。

以下、①仕訳なし、③期間按分と略します。

 

3. 「仕訳なし」の会計処理

(1) 考え方
法人税上「フリーレント期間の賃料」は、実質免除又は値引きと考える。
この考え方では、フリーレント期間は、賃料が値引きされているため「仕訳なし」、実際賃料の支払が生じた時から仕訳を計上。
消費税上フリーレント期間は、対価を支払っていないため、「フリーレント期間」の賃料は「課税仕入」に該当しない。フリーレント期間終了後に実際支払う賃料が「課税仕入に係る支払対価の額」であり、あくまで、賃料支払に応じて「課税仕入」を認識。
(2) 仕訳例

● 事務所家賃 月額10万円(別途消費税1万円)
● 賃貸借期間 1年(更新なし)、フリーレント期間3か月、中途解約は不能
● 年間賃料総額90万円(別途消費税9万円)
 ⇒(10万円×9か月。実質、1年間 9か月分の賃料)
● 敷金・礼金は無視する。

 

フリーレント期間は支払がないため、仕訳なしとなります。実際支払が生じた時点より仕訳を行います。

借方貸方
フリーレント期間中仕訳なし
フリーレント期間終了後(毎月)地代家賃
仮払消費税
100,000
10,000
現金110,000

4. 「期間按分」の会計処理

(1) 考え方
法人税上フリーレント期間も、実際、事務所は利用しているため、「中途解約ができず、賃料総額が確定しているフリーレント」は、発生主義に基づき、フリーレント期間も含めて期間按分による費用計上を行う(=損金)。

消費税上消費税上の「課税仕入を行った日」は、原則として「法人税法や所得税法上の費用計上時期と一致する」ため、法人税や所得税上、フリーレント期間を含む契約期間で按分費用計上している場合は、消費税もそれに応じて「課税仕入」認識できる(消費税法基本通達第9章(資産の譲渡等の時期)に準ずる)
(2) 仕訳例

先ほどと同じ例題にします。

● 事務所家賃 月額10万円(別途消費税1万円)
● 賃貸借期間 1年(更新なし)、フリーレント期間3か月、中途解約は不能
● 年間賃料総額90万円(別途消費税9万円)
 ⇒(10万円×9か月。実質、1年間 9か月分の賃料)
● 敷金・礼金は無視する。

借方貸方
フリーレント期間中(※1)地代家賃
仮払消費税
75,000
7,500
未払費用82,500
フリーレント期間終了後(毎月)(※2)地代家賃
仮払消費税
未払費用
75,000
7,500
27,500
現金110,000

(※1)900,000円(年間賃料総額) ÷12か月 = 75,000円/月(消費税7,500円)
フリーレント期間中は、「賃料総額÷賃借期間」で算定した「月額家賃」を費用計上。
また、費用計上と合わせて、消費税も「課税仕入」で計上します。

(※2)フリーレント期間終了後も、フリーレント期間と同様、「月額家賃」を費用計上。
一方、実際支払額100,000円/月(消費税10,000円)との差額は、未払費用取崩の処理を行います
(差額の性格は、フリーレント期間に計上した「未払費用」)。
 

5. 実務上は?過去の判例は?

明確な規定がないため、あくまで私見となりますが・・税法上は、上記2つの処理、どちらの選択も可能だと考えます。

ただし、実務上は、圧倒的に「支払いに応じて仕訳を行う」(=仕訳なし)方法が楽です。

一方、裁判例では、「上記2」の考え方が否認されている場合もあるようです(平成30年6月15日裁決)。
(裁判例は、フリーレント期間は、「無料、免除」ではなく、「賃料減額」で先方と合意されている事例です。

確かに、先方(賃貸先)の会計処理は不明のため、税務調査の観点からも、上記1の方が無難な結論なのかもしれません。

結論的には、上場会社などでは、「期間按分」が必要な場面もあるでしょうけど、中小企業の場合は「仕訳なし」でよいのではないでしょうか?

 

6. 参照URL

(平成30年6月15日裁決)

https://www.kfs.go.jp/service/JP/111/13/index.html

税務通信3338号(2014年12月1日)
 

7. Youtube

 
YouTubeで分かる「フリーレントの借主側(テナント)の税務処理は?」
 

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