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Q172【徹底比較】割賦購入の会計処理・割賦手数料の取扱いは?/リース購入とどちらが得?

最終更新日:2024/10/19

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Q172 割賦購入の会計処理/税務処理

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

車など「高額」な固定資産等を購入する場合、割賦(ローン)や、リースで契約する場合があると思います。
今回は「割賦購入」の会計処理を解説し、リース取引の会計処理との比較を行います。

 

1. 会計処理・税務上の取扱い

(1) 固定資産本体価格

割賦で購入する場合も、固定資産を購入する点では「現金一括払」と違いは全くないため、固定資産本体部分は「固定資産」で計上します。

 

(2) 割賦手数料の取扱い

割賦で購入する場合は、「割賦手数料」が含まれているため、固定資産「本体価格」よりも「支払総額」が多くなるのが一般的です。「割賦手数料」の実質内容は、返済期間に応じた「利息」となります。
「割賦手数料」については、税務上は、下記2つの処理が認められています。

原則取得価格に含める
例外「支払利息」として区分して期間按分

税務上は、実務上の便宜を考慮して、原則として「割賦手数料」部分を区分せず、取得価格に含めて処理することとされています。
ただし、①購入代価と②割賦期間分の利息等が明らかに区分されている場合は、「支払利息」として別建処理し、期間按分することが認められています。

 

2. 具体例

2020年4月に、新車を割賦(ローン)で購入した。
・車両本体価格 3,300(本体3,000、消費税300)
・割賦手数料  500(購入時に一括払するものとする)
・支払総額   3,800

● 車両の法定耐用年数:6年(定率法、償却率0.333)
● ローン返済期間:5年(60か月)
● 3月決算の法人とする

※諸費用については省略。車購入時の会計仕訳については、Q56をご参照ください。

 

(1) 原則的な会計処理(手数料を取得価格に含める)

① 取得時

借方貸方
車両運搬具(※1)3,500長期未払金3,800
仮払消費税(※2)300

(※1)3,000+500=3,500
(※2)3,000×10%=300
 
● 支払期間は5年ですが、消費税は購入時に全額控除可能です。
割賦手数料部分は「消費税非課税」ですので、会計ソフト上、本体価格3,000に対応する消費税300は、手入力しないといけない点に注意しましょう。

 

② 決算時

借方貸方
減価償却費1,165車両運搬具1,165

● 3,500千円×0.333=1,165

原則法では、割賦手数料部分も、固定資産の減価償却計算を通じて償却されますので、実務的には楽ですね。

 

(2) 例外的な会計処理(手数料を支払利息として期間按分)

① 取得時

借方貸方
車両運搬具(※1)3,000長期未払金3,800
長期前払費用(※1)500
仮払消費税(※2)300

(※1)車両本体価格のみが車両運搬具、割賦手数料は「長期前払費用」として、期間に応じて費用化します。

 

② 決算時

借方貸方
減価償却費(※1)999車両運搬具999
支払利息(※2)100長期前払費用100

(※1)3,000×0.333=999
(※2)500 ÷ 60か月 × 12ヶ月=100

●例外処理の場合の初年度費用合計は1,099(減価償却費999+支払利息100)。
原則処理での費用額1,165と金額が異なってくる点に注意しましょう。
 
●例外処理では、本体「車両運搬具」部分は定率法、「支払利息」部分は均等償却となるため、原則法とは毎年費用になる金額が異なってきます(割賦期間5年間トータルで比較した場合の「費用合計額」は同じ)。

 

3. 実務上の取扱い

実務上は、契約書や返済予定表で「利息部分」が明示されていない場合が多く、かつ処理も平易であることから、中小企業では「原則法」で処理する場合が多いと思います。
初年度費用額も、ほとんどの場合、「原則法」での会計処理の方が多くなります。

 

4. 割賦購入とリース購入どちらが得?

(1) リース取引の税務処理

割賦購入とよく似た支払方法に「リース取引」があります。
リース取引は、税務上、下記2つの処理が認められています(詳しくはQ91をご参照下さい)。

原則売買取引(資産計上)
例外(中小企業の場合)賃貸借処理(リース料支払時に費用処理)

中小企業の場合、例外的に、リース料支払時に支払額を損金にすることが認められています
(「中小企業の会計に関する指針74-3」)。実務では、圧倒的に例外処理が多いです。

割賦購入の場合は、「本体+利息」含めて「固定資産で計上」し、定率法等で償却を行うのが原則でしたので、リース例外処理の場合と比較して、毎年の費用額が異なってきます。

 

(2) リースと割賦購入は税務上どちらがお得か?

結論的には、両者とも「支払総額が経費」になる点、費用の大小の違いはありません。
ただし、決算間際に損金を作るという観点では、リースの方がお得になる場合があります(賃貸借処理の場合)。
なぜなら、リースの場合、支払額が損金で認められるため、購入時にリース期間を短く設定すれば、短期的には、割賦購入による「減価償却費」以上の経費を生み出せる可能性があるためです。

 

(例 決算月に固定資産を購入する場合)

● 割賦購入の場合、初年度の減価償却費は、定率法償却額÷12ヶ月×1ヶ月で計算され、一般的には少額になります。一方、リース購入の場合は、支払額が損金になりますので、割賦購入のような月割按分は行いません。たとえ決算月でも、当初の支払額が多い場合は、損金を多く作れる場合があります。

割賦購入リース
経費定率法償却額÷12か月×1ヶ月リース支払額

 

(3) 注意事項

税務上、所有権移転外FLのリース期間については、耐用年数の70%以上(耐用年数10年以上の場合は60%)の制限があります。したがって、リース期間は、耐用年数の70%(or60%)以上に設定する必要があります
(満たさない場合は所有権移転FL)。
また、リース料は短期前払費用の適用対象外となりますので、たとえ、役務提供1年以内のリース料をまとめて支払った場合でも、翌年以降分は「前払費用」で計上する必要があります。
 

5. 参照URL

(減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5400.htm

(短期前払費用の取扱い)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/02/03.htm

 

6. YouTube

 

YouTubeで分かる「割賦購入の会計処理」
 

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