行政書士
社団法人
1.一般社団法人とは?
「社団法人」は、「人の集まり」に対して法人格が与えられた、営利を目的としない団体となります。
同窓会や協会等で、一般社団法人を設立するケースも多いですね。
広義には「公益社団法人」「一般社団法人」の2つが含まれます。詳しくはQ101をご参照ください。
2.一般社団法人の特徴
一般社団法人の特徴は、下記の6つです。
(1)事業目的に制限はない
NPO法人との大きな違いです。一般社団法人の場合、特に事業目的や内容に制限はありません。
公序良俗に反しない限り、どのような目的でも設立可能です。
(2)監督官庁はなく、設立期間も短い
一般社団法人では、NPO法人のような監督官庁が存在しないため、自由な活動が可能です。
所轄庁に事業報告書等の提出義務もありません。
また、許認可もありませんので、株式会社等と同様、2週間程度で設立が可能です。
(3)剰余金の分配は不可
一般社団法人は営利を目的としない法人ですが、「収益事業」を行うこと自体は可能です。
ただし、獲得利益は、主たる事業運営のために利用する必要があり、株式会社のような「剰余金の分配」はできません。
(4)収益事業のみに税金がかかる
一般社団法人(非営利型)が行う「収益事業」については、他の会社同様、税金がかかります。
この点は、NPO法人と同様です。
(5)設立時に必要な人数は少ない
設立時に社員2名、理事1名が必要となりますが、NPO法人と比較すると少ないです。
(6)「基金」による資金調達が可能
設立時の出資はありませんが、設立後、「基金」という形で、幅広い資金調達が可能なります。
「基金」の特徴は以下のとおりです。
●利用使途の制限はない
●社員以外の第三者引き受けも可能
●基金の額は「純資産の部」に表示。登記事項ではない。
3.一般社団法人のメリット・デメリット
一般社団法人のメリットとデメリットを、個人や、法人と比較します。 メリットのある方に色を付けています。
(1)個人と比較
一般社団法人 | 個人 | |
---|---|---|
社会的信用度 | 高い | 低い |
出資者の責任 | 出資がないため責任なし | 事業主は無限責任 |
名義 | 法人名義で契約可能 | 個人名義での契約のみ |
設立手続 | 個人と比較すると複雑 | 簡単(開業届のみ) |
設立に必要な実費 | 11~15万円 | 0円 |
決算処理 | 個人と比較すると複雑 | 普通 |
税金 | ●赤字繰越期間 10年 ●本人・家族への給料損金可 ●税率は固定 (実効税率約30~35%) ●経費の範囲は広い | ●赤字繰越期間 3年 ●本人、家族への給料損金不可 ●所得に応じた累進課税 (最高実効税率55%程度) ●経費の範囲は狭い |
税金(均等割) | 赤字でも均等割負担あり (7万円程度) | 赤字の場合、税金はゼロ |
(2)NPO法人と比較
一般社団法人 | NPO法人 | |
---|---|---|
設立に要する期間 | 2週間程度(認証なし) | 5か月程度(認証あり) |
設立に必要な実費 | 10~12万円 | なし |
設立時の社員数 | 2名以上(理事1名以上) | 10名以上(理事3、監事1名以上) |
役員の親族規定 | なし | あり |
活動内容の制限 | 制限なし | 特定非営利活動のみ |
剰余金の分配 | できない | できない |
所轄庁への決算書報告義務・公衆縦覧 | なし | あり |
補助金 | 普通 | 多い |
税金 | 収益事業のみ(非営利型の場合) | 収益事業のみ |
ステップアップ | 公益社団法人 | 認定NPO法人 |
(3)株式会社と比較
一般社団法人 | 一般の株式会社 | |
---|---|---|
社会的信用度 | 高い | 普通 |
設立に要する期間 | 2週間程度 | 2週間程度 |
設立に必要な実費 | 11~15万円 | 20万程度 |
設立時の準備資金 | 資本金不要 | 最低1円必要 |
設立時の社員数 | 2名以上 | 1名から可 |
税金 | 収益事業のみかかる | すべてに対してかかる |
借入金 | 「基金」という形で可能 | 可能 |
剰余金の分配 | できない | できる |
その他 | 上場はできない 一般社団法人、一般財団法人以外の法人(株式会社やNPO法人など)と合併はできない(事業譲渡は可) | 上場できる |
4.一般社団法人運営の留意事項
(1)事業年度・定時社員総会
年に1度、決算を行う必要があります。
事業年度終了後2か月以内に「定時社員総会」で決算の承認を行い、税務署に確定申告書を提出します
(2)機関設計
設立時に社員2名以上、理事1名以上が必要となります。
なお、理事会・監事は設置しないことも可能です。
理事会を設置する場合は、最低、理事3名、監事1名が必要となります。
(3)税制
非営利型の場合「収益事業」に対してのみ課税されますので、税法上は優遇されています。
詳しくは、Q101をご参照ください。
(4)収入源や助成金は?
運営するための収入源は、会費や寄付金、事業収入などがメインになります。
NPO法人等と比較すると、受けられる補助金・助成金は少ないのが現状です。
詳しくは、 Q166をご参照ください。
(5)給与・報酬支給
剰余金の分配はできませんが、従業員等に対して、給与や報酬の支給は可能です。
(6)既存の任意団体を一般社団法人にする場合
既存の任意団体・協会を「一般社団法人化」する場合は、以下の点に留意ください。
①一般社団法人に資産等を売却する場合の税金
一般社団法人に資産等を売却する場合は、税金がかかるケースがあります。
税制上「非営利型」一般社団法人にしておくことで、設立後に任意団体から財産の無償譲渡(寄付)として取り扱えば、非課税となります。
②任意団体時代の文化と、一般社団法人法との整合性
一般社団法人法では、例えば、機関設計等も決められていますので、一般社団法人に移行する際は、これらの法律に従った組織を構築する必要があります。
5.一般社団法人の設立の流れ
(1)設立費用・設立に要する期間
●実費として11~15万円がかかります。
●設立に要する期間は、おおむね2週間程度です。
(2)設立の流れ
①機関設計の決定
●一般社団法人の「機関設計」を決めます。社員総会の他、1名以上の理事を必ず置かなければなりません。
また、定款の定めにより、理事会・監事又は会計監査人を置くことができます。
●理事会や会計監査人を設置する場合は、別途監事を置かなければなりません。
②2名以上の社員確保、うち、1名以上の理事を選任
2名以上の社員を確保し、理事となる人1名以上を選任します。 (「理事会」を設置する場合は、理事3名以上が必要)
③定款作成
●定款とは、事業目的や根本規則などを規定したものです。設立時には必ず作成しないといけません。
●定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と、記載しなければ効力が生じない「相対的記載事項」、任意に定款に記載しておける「任意的記載事項」があります。
「絶対的記載事項」は、1つでも欠けていると、定款全体が無効となります。
●目的
●名称
●主たる事務所の所在地
●設立時社員の氏名又は名称及び住所
●社員の資格の得喪に関する規定
●公告方法
●事業年度
(相対的記載事項・任意的記載事項)
定款で定めなければ、法の条文通りの効力が発生しますので、法の効力を変更したい場合は、定款で「相対的記載事項」を定めます。記載しておかなければ効力が生じないものですので、「絶対的記載事項」と同じくらい、大切な事項となります。
代表例を記載します(他にもたくさんあります)。
●理事会を置く旨の定め
●監事を置く旨の定め
●理事の任期短縮
④定款の認証
●定款作成後は、公証役場で公証人による「定款の認証」を受けます。
「定款の認証」とは、定款が正当な手続きで作成されたことを証明するものです。
この認証を受けなければ、定款の効力は生じません。
場所 | 主たる事務所所在地を管轄する法務局に所属する公証役場 |
---|---|
必要書類 | ●定款3部 ●設立者全員の印鑑証明書 ●設立者全員の実印+身分証明書 ●収入印紙 |
料金 | 手数料5万円、収入印紙4万円 |
(注意事項)
●電子定款の場合は、印紙代4万円がゼロになります
●定款には、設立者全員が実印を押しますが、定款末尾に設立者全員の「捨印」が押印されていれば、訂正が容易です。
⑤設立時理事等の就任承諾書の入手
社員の決議により、設立時理事を1名以上選任し(定款で設立時理事を定めた場合は不要)、各役員が作成した「就任承諾書」を入手します。
⑥設立手続きの調査
設立時理事(及び監事)は、一般社団法人の設立の手続きが法令または定款に違反していないことを調査しなければなりません。
⑦設立時代表理事の選定(理事会を設置した場合のみ)
理事会を設置した場合には、設立時理事はその過半数をもって、設立時理事の中から設立時代表理事を選定します。
⑧登記申請書類の作成&提出
事務所所在地を管轄する法務局窓口に、設立登記書類を提出します。
必要書類 | 留意事項 |
---|---|
設立登記申請書+印紙貼付台紙 | 登録免許税 (6万円) |
定款 | ●公証人認証済の定款を添付。 ●電子認証の場合はCDR等で提出。 |
設立時代表理事を選任したことを証する書面 | ●定款で代表理事を定めている場合は不要。 ●理事会を設置する一般社団法人で、定款で代表理事を選定しなかった場合には、理事の中から代表理事を選定し、選任した旨の記載のある議事録を提出。 |
設立時理事及び設立時監事の選任決議書 | ●定款で設立時役員を定めている場合は不要。 ●定款で設立時役員を定めなかった場合には、設立者の中から設立時役員を選任し、選任した旨の記載のある議事録を提出。 |
主たる事務所の所在場所決定決議書 | ●定款で主たる事務所所在地を定めている場合は不要。 ●定款で、主たる事務所所在地を最小行政区(例 港区など)までしか定めなかった場合には、主たる事務所の具体的所在地を決議し、議事録を提出。 |
設立時役員(理事・監事及び代表理事など)の就任承諾書 | 理事会を設置する一般社団法人で、代表理事については、以下の場合不要。 ●代表理事の選任を行った議事録に、その者が就任を承諾する旨の記載があり、かつ、その者が当該議事録に記名押印(実印)を行っている場合。 |
印鑑証明書 | ●理事会を設置しない場合は、設立時理事全員の印鑑証明書が必要。 ●理事会を設置する場合は、設立時代表理事の印鑑証明書と、その他の設立時理事・監事の「本人確認証明書」(住民票の写しなど)が必要。 |
印鑑届出書 | ●法人印鑑(代表者実印)を届出する書類。 |
登記事項を記録したCDRなど | ●申請書に記載する事項のうち、登記すべき事項を、CD-R等に保存して提出。 |
●本人確認証明書は本人が「原本と相違ない」旨を記載し、記名押印が必要です。
登記申請書類を提出して、約1~2週間で登記が完了し、一般社団法人の設立が完了します。
⑨税金・社会保険・労働保険関係の届出
法人設立完了後、税務署、県税事務所、市役所、年金事務所、労働局、ハローワークなどに、それぞれ提出物があります。詳しくは、Q99をご参照ください。